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すると、寝台にて後産に入っていたはずの王妃が、烈しく喘いだ。
ヴェルミリオの泣き声に同調するかのようだが、いささか苦しげである。
にわかに産婆たちの血相も変わり、室内の空気が張り詰めた。
「大神官様! まだ……、もう一人……っ、残っています!」
「なにっ……?」
胎の中で蠢く取り零しは、程なくして取り上げられると、兄に比べ弱々しい産声を上げた。
産婆が戸惑いを露わに、小さく頼りない王女をフュージャーへ差し出す。
「なんとっ……。託宣によれば神の子は一人のはず……ならば神託の御印はいかに──」
豆粒のような眼を覗くや、大神官ともあろうにフュージャーは、頓狂な声を上げて腰を抜かした。
不穏にさざめく産褥の間に、ただ一人ヴェルミリオの声だけが、割れんばかりの威勢を奮って響いていた。
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