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「後からお生まれになった姫様には、いずれの加護も確認できませんでした」
「おお……そうであるか」
いくらか肩をすぼませ、フラー四世は先を促す。
「して、ヴェルミリオはいかに?」
「王子の左目には……風の御印を確認できました。しかし──」
大神官の硬い声に、嬉々と耳をそば立てていた王が怪訝に顔を曇らせた。
「しかし……何だ?」
フュージャーは、消えそうに密やかな声で告げる。
「殿下の右目には……────が顕われているのでございます」
「何っ、それはいったいどういうことか!」
驚嘆露わに、王はフュージャーに詰め寄る。生まれる予定になかった王女なら、さして気にも留めないが、期待をかけて迎えた王子となれば話は違うとでも言いたげだ。
「わたくしにも、理解の及ばぬ事態でございます。王妃様も動転して、我が子を抱くより先に伏せってしまわれました。あまりにお心を乱されては、予後にも障りましょう。差し出がましくも……、おそばにてお気持ちに寄り添って差し上げてはいかが──かと」
「承知した。王妃……ウェレネはわたしに任せよ。しかしその前に一度、我が子をこの目で見たい。よいか、フュージャー」
「……もちろんにございます」
フュージャーは、豪奢なしつらえの扉を振り返り、手を打ち鳴らした。
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