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『あんた、世のため人のための戦師なんでしょ。 あんたのその目から見てどうよ? このあたしが悪霊に見えるってぇの?』
言われてみて、言葉に詰まる。 たしかに。 目の前にいるモモ……の中にいるのだろうそのオバチャンだが、悪意も殺意も特に感じない。 濁ったオーラの持ち主が近くにいればなんとなく察知することが可能な俺からすれば、たしかに……このオバチャンはその怪事件の犯人といわれる悪霊ではないのだろう。
「じゃあ、なんで。 モモに憑依なんかしてるんだ」
『そうそれ! だーかーら、話を聞いてってさっきから言ってんじゃないのよ。 聞きなさいってのよ、まったくもう』
オバチャン霊に怒られた。 えぇえ、俺が悪いのか……?
「……わかった、話は聞く。 その前に」
一応同意はして、手を引いて元の体に戻した。 気になったことがあったからオバチャンに確認を入れた。
「七年前から取り憑いてるってことは……俺がモモを城に連れてきた時だって、ずっと中にいた……って、ことだよな?」
『まあ、そうね』
「……、えっ……と、その」
『うっふふー。 熱いなぁ青年! いやー、オバチャン的には大いに目と耳の保養だったけどねぇ』
「や、いい、もういい、話、始めろよ……」
『男はガツンといってナンボよ? 彼女だって、あんたのストイックという名の煮え切らない態度にヤキモキしてるかもね!』
うわぁ。 だってこのオバチャン、俺とモモの馴れ初めから全部を知ってるということではないか。 軽く目眩を覚えた。 なんというか見た目だけはモモ本人なのに、こんな言葉をくらうのって反則くさくないか……?
彼女の話は長かった。 というか、話があちこちに飛ぶ、というのかすぐに脱線して雑談が混ざるのだ。 要点が掴みにくい。
彼女いわく、彼女は元々はウェスター城に仕える『将軍』だったそうだ。 現代史の時間にそういえば習った気もする。 かつてウェスター城は、今のように王と戦師による和気あいあいとした雰囲気ではなかった。王の元に二人の将軍がそれぞれ兵たちをまとめあげて率いていたのだ。
ウェスター王の権力はかなり強く、内閣府などが今ほど上手く機能していなかった。 ゆえに、治安も荒れ気味だったそうだし、力を蓄えて反乱を起こして王に成り上がろうとする不届きな輩も多かったと聞いている。
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