怪事件とオバチャンと

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最初は胡散臭いと思った。 戸惑いながらも彼女の話に耳を傾けていたが、信じようと思えたのは。 彼女が先の王様と大将の若かりし頃のことを雄弁に語られたからだ。 『あの二人は昔っから本当にやんちゃ坊主で。 所属が違ったからね、めちゃくちゃ可愛かったわー……なんなら二人にあたしのことを聞いてごらんなさいな。 きっと……ってそうか、ショウちゃんは今は駄目なんだっけ』 ショウちゃん。 俺を城にスカウトしてくださった恩人である王様のことだ。 王族でありながら修行として、幼い頃からウェスター国王軍に所属していた、と聞いている。 幼馴染であるタスケ……今の大将と共に。 王様は今から三年前ほど前に、原因不明の大怪我をされた。 一命は取り留められたけれど、その時から未だにお目覚めになっていない。 「しょ、将軍……」 そう言われれば、俺の手刀に全然驚かなかったのにも頷ける。 つまり……このオバチャン、俺からすれば大先輩にあたる訳だ。 なんにしろ、所属は違ったそうだけど王様の上官じゃないか……! 『あらぁ、顔色変わった。 うっふふ、相変わらず真面目君ねぇあんた』 「……失礼、しました。 無礼は詫びます」 いやいや、だったらなんで今になっていきなり現れる? モモが城に来た時点で、王様への接触は無理でも大将に声をかけたら良かったじゃないか……! 『あたしにも、あたしの都合ってもんがあるんだってば。 今までは良かったの、このままで。 実際あんただって、あたしがこの子に入り込んでることを知らないで過ごしてきたでしょ』 そう言いながらもオバチャン先輩は、暫しなにやら考え込んでいた。 それから真っ直ぐに俺を見つめて、宣言するかのように言い放ってきた。 『この子にね。 あたし、内側から働きかけたのよ。 あぁ、生前のあたしはそれこそ将軍まで上り詰めたんだけど、死後はさほどでもないの。 一般の浮遊霊、だからね。 この子は夢の中で無くした過去について、向き合ったの。 だからこんなに疲弊した』 れ、霊って、そんなこと出来るんだ……!? 少し驚いた。 『あんまりにも憔悴しちゃったから、途中でやめたの。 おかげで、最後まで伝えられなかった……だからさ』 モモの中のオバチャン先輩は、俺の顔を見たままにじり寄ってきた。 互いの息が届くような位置でモモの体にて俺に宣言する。 『明日の晩、この子に悪夢の続きをみせようじゃない。 おそらくとんでもない恐怖に駆られた彼女は、あんたを頼ってここに来る』
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