悪夢の始まり

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気がつけば、辺りは真っ暗で。 かろうじて足元は見える。 どちらに行けばいいのかも分からないけれど、とにかく私は歩き出した。 なんだろう……物凄く嫌な予感というか、これからとんでもなく怖いことが待ち受けているような気がしてしまう。 この不安を私は知っている、気がする。 どうしてなのか、私自身のことなのによく分からない。 頭の中に(もや)がかかっているみたいだ。 止まっていると正体不明の不安に飲まれそうになる。 だから無理をしてでも足を動かすのだけど、出口などが見えている訳でもない。 なんで私、夢の中でまでこんな理不尽な目に遭っているんだっけ…… (夢の中……!) 私自身が内心で呟いて、その感覚に驚く。 理解が追いついていないだけで、無意識のうちにここが悪夢の中であることを感じていたようだ。 そうだ、私は……かつて、理不尽の中にいた。 目が覚めたら何も覚えていなかった。 生き延びるためには、傍にいた大人を頼らざるを得なかった……例えその人がどんな人であれ。 私はまだ、一人で生きていける年齢ではなかった。 辺りは相変わらず薄暗い。 歩いているここは……草が生えている。 周辺に木々もあるようだ。 山の中……? そう思った時、なぜだか背筋が凍りつくような悪寒が走った。 (嫌だ、嫌だ……怖い……!) 分からないのに思わず振り返ってしまう。 薄暗かった辺り一帯は、いつしか崖のようになっていた。 断崖絶壁のその下には激流の川。 更にその流れの先は雄大な滝になっていることも、なぜだか分かった。 そして、振り返った先に得体の知れない【見てはいけなかったもの】を目の当たりにするのだ。 それを見た私は足がもつれて尻餅をついてしまい、恐怖に戦慄(わなな)く。 私のすぐ近くにまで接近していたそれは、ゆっくりとこちらに歩み寄ってくる……腰が抜けてしまったように立てない私は、ここが崖の上だというのにこの場から逃げたい一心で後ずさる。 完全にもう後がない、それを痛感した時にそれは地を蹴って跳躍してきた。 私に襲いかかってきた。 絶望が全身を支配して、私は両目をきつく閉じて顔を両手で覆い縮こまることが精一杯だった。 長い長い一瞬が過ぎて、そして―――…… 「…………っ、はぁ……っ」 ……目が覚めた。
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