1人が本棚に入れています
本棚に追加
「兄さん、只今」
大学一年 悠木にはニつ上の兄がいる。大学3年の優秀でルックスが良く、面倒見のいい女性に人気の兄 雄司。
数年前に兄の母が事故に遭い、孤児院または警察が一時保護をしていたのを悠木の母が見つけ“二人目が欲しかったから”と養子でやってきた。【血の繫がってない】兄弟。
「おかえり、今日の講義どうだった? わからない所教えてあげようか」
悠木が返ってくる時間になると必ず兄が出迎える。カバンを持ち、学校での出来事を聞き、夕食も一緒に食べて、部屋に引きこもれば分からないところを教えてくれる尊敬できる兄だ。
学力が足りず、元は別の大学に居たが「弟のことが心配」だと兄の言い分に弟が行くであろう大学へ。親も流石に反対したが“兄が言うことには何故か強くは言えない”のか渋々受け入れ、今に至る。
「兄さんのお陰で苦手な所で分かるようになったよ」
「そうか」
「でも、此処がわからなくて……」
数年前から変わらない思春期、反抗期なら部屋を別々にするだろうが成人しても二人は仲良く一緒の部屋。
家具も何も共有しており、服だけは身長や体型の関係でサイズは違うがメーカーやブランドも似たようなモノ。もちろん服装も。
「これはそうだな。一度間違えると全てボロボロに崩れる問題だから、前の問の答えの中で何かが違っている場合がある。例えば……此処とか」
丸いテーブルに向かい合い、楽しく話勉強する姿は親にはとても嬉しいことだったが“不安”でもあった。
最初のコメントを投稿しよう!