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「此処は……」
掠れた声に雄司は床から何かを拾い上げ、嬉しそうに寝込む悠木の元へ。
「おはよ。此処は……オレが作品作る場所だよ。数年前にテレビでよく『子どもの誘拐多発。死体は郵便物となってくる』とかやってなかった? 流石に覚えてないよな……個人的には傑作だったんだけど」
いつもと違う目つきに怖くなり、逃げようとする悠木だったが手首と首に巻き付く鎖に「なにこれ……ねぇ、雄司」と今にも泣きそうな顔で言う。
「ヤダな、その顔で震えた声で言われると興奮するじゃん」
狂気ある言葉に更に怯えたか。
鎖を引っ張り、無理やり切ろうとする“可愛い姿”に思わず本音が漏れる。
「逃がさないよ、悠木。絶対に離さない。両足を切り落としてでも、キミはずっとオレの傍から離さない」
片手で顔を多い、笑いを堪えるように目の前で立ち止まっては屈む。大きく深呼吸し隠していた本性を出す。
「オレね、今すごく嬉しいんだ。好きとか仲良しとか……そういうの壊すの好きでさ。でも、悠木は俺の弟だから壊したら何か違う。だけど、壊したくて仕方がない。だったら、いつもは一気に壊すけど“好きだからこそ四肢一つ一つ斬り落として全てを愛して殺せばいい”そう思ったわけさ」
赤く錆びついたナイフを悠木の左肩に向け、声が出ない悠木に続けて言う。
「オレに愛されるっていいことだよ。さっき話したけど、いつもは生きたまま悲鳴と泣き声聴きながらすぐにズタズタに切り裂いて、箱に詰めて……。たまに郵便箱に詰めてた時もあったな。業務用の機械でミンチにして……。でも、今回は――オレに愛されながら死ぬ姿が見たい。だから、悠木――大好きだよ」
ニカッと雄司らしくない笑みを浮かべ、勢いよくナイフを振るった。
薄暗い部屋に赤い血が絨毯のように広がる。
叫び声も泣き声も気づけば止まっていた。
とても嬉しくて高笑いしていたが何処か寂しい。
大好きな斬り落とした弟の手を抱きながら、痛みで吐血し吐瀉物を吐き出し、変わり果て動かなくなった弟を見つめる。
まだ腐敗はしてない。
新鮮。
「あぁ、こうやって愛するのも悪くない。いつまでも一緒だ。朽ちても……土に返っても」
微かに温かい血に濡れながら、彼は幸せそうに笑った。
【完】
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