かみうじ

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かみうじ

 「はぁ〜ぁ、大変面白い顔を見せて頂いて、ありがとうございましたぁ」  踵を返し、ダイリは巨大なモニターの前まで戻っていった。  改めて周囲を見てみると、映画でしか見たことのない銃を持ち、真っ黒い特殊部隊のような服装に身を包んだ男たちが、どこに繋がっているのかも分からない扉の前に二人ほど立っている。巨大モニターにはニュースでよく見る国会議事堂が映し出され、ダイリと同じ白衣を纏う男女が白いカップを片手に談笑していた。  しばらくすると、扉が開かれ大柄の男が二人でてきて、俺と被験者の男を担いでどこかへ連れて行こうとする。抵抗しようかとも思ったが、もはやそんな余裕などないらしく、体は一ミリも動きそうに無かった。  大人二人が通るにはやや狭い通路を素早く移動し、すこしかび臭くなったなと感じると、担いでいた男は軽々と俺を投げ、牢に入れられた。  打ち付けた箇所がズキズキと痛むのも、もはやどうでもよかった。同じ牢に入れられたこの男のように成るのなら、何をしたって無駄になるだけだ。  絶望を噛みしめるほか、俺には何も出来なかった。  「────…」  冷たい金属板に押し当てたままの顔に、何かが伝わる。  段々と大きくなるそれは、地震のような、けれど明確に地震とは異なる震えだった。  警報が鳴り渡り、組織の人間たちが騒がしくなっていくのが聞こえる。  その間にも揺れは変わらず大きくなり続ける。  牢は軋み、廃人は右へ左へ転がって笑んでいる。  ひときわ大きく床が揺れ、走っていた白衣の女が牢に強く体を打って転けたとき、ピタリと揺れが止んだ。  奇妙な静寂が訪れ、警報だけがけたたましく悲鳴を上げ続けた。  「何だったの……」  床を這う女がぽつりと溢した。  その様子に思わずほっと安堵の息を吐き、牢の中にいるという現実が帰って来る間際、それは訪れる。  「……ぅあっ!」  ふわり、体が浮いたと思えば、直後床に叩きつけられる。打ちどころが悪かったのか、そのまま意識が混濁して、うまく頭が回らない。  意識を失ってしまう恐怖を感じながら、どこか温まるような、全身から悪いものが抜け出ていくような感覚に包まれて、瞼が落ちた。
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