クレヨンは『異世界』への道標

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「吉田ぁー!」 本当に自殺だなんて馬鹿なことをしたのだろうか。マサミは二次元の女なのに? だからといって、恋愛シミュレーションゲームのバッドエンドの煽りで俺も消されるのだろうか。吉田のオマケに? ーーふざけんな! そんなのに巻き込むな! 『……わかってる。女々しくてみっともないよね。マサミが僕のモノにならないなら、僕は異世界にでも旅立つしかないんだよ』 二次元が終わったら三次元? 牛丼を食べ終わった後になってオマケの生卵に気付いた吉田は、俺の牛丼に卵を割り入れながら言った。それが吉田との最後の晩餐(ひるめし)だ。 吉田の安否はミリ単位くらいには気になったが、吉田に付き合う道理も義理も友情もない。そこにあるのは同僚であり幼馴染みという腐れ縁だけ。 炎や煙からーーというより、吉田から逃げるように非常口へと走る。 「……あ、あれ!?」 股間が振り子のように揺れて落ち着かない。 「ちょ、ちょっと待てっつーの!」 いつの間にか腰巻きのタオルが消えている!! おれの下半身は、丸出しだ。 「嘘だろ……何処に落とした!?」 後方は炎の海。戻ることはできそうもない。 前方にある非常口は目と鼻の先だが、全裸で開け放つには下半身が非協力的。 「くそー! どうするんだよ、俺!?」 炎は畝りながら嘲るように猛然と向かって来ている。 股間が寒い、いや、熱い。 「公衆の面前で変態になるのか……俺……」 無情に襲って来る熱波が焦りを煽る。 一刻の猶予もないことは後方の勢いを見れば一目瞭然だった。助かるには非常口を開く、その一択。 恥や外聞って何だろう。 26歳未婚で独身。恥じらうのはおかしい? ……真顔で考えた。
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