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「俺も宮野さんとこれからも仲良くしたいです!失礼な事を言った立場でこんな事を言うのは烏滸がましいかもしれないですが、宮野さんに色々教えて欲しいです。体の事もそうですけど、今回の事でメンタル的な意味も知りたくなりました。それに自分自身を見つめ直す機会にもなりました」
「じゃあ、また色々聞いていい?筋肉のつけ方とか、あと…柔軟性も凄く気になってたの。」
「俺の体で良ければ全然良いっすよ。あ、あとこれ一応買ってきたんです」
東雲はソファーの横から自分に紙袋を渡してきた。一体なんだろうと宮野はきょとんとしながらな中を見ると、中には知っているブランドのチョコレートが入っており、宮野は顔を輝かせながら驚いた。
「このブランドのチョコレート凄く好きなの!高かったでしょ?」
「俺の精一杯の気持ちです。それに宮野さんが好きなもの、俺はまた買えたんですね!」
東雲と自分は性格や見た目もそうだが、得手不得手も真逆だ。それなのに物に対しての価値観が凄く似ている。
東雲から昨日貰った石鹸もさっき置いたんだよと宮野は口にしながら、チョコレートの箱を見てふんわりと笑った。何だか宝物がまた一つ増えたようなそんな気分になってしまう。
「そうだ!さっき頼んでたはちみつ紅茶届いたんだ。それ飲みながら食べたいなあ…」
「宮野さんの好きにしていいですよ?」
「でも昼ごはんまだ食べてないし……あ、東雲くん何か食べたいものある?」
「ええ!?リクエストしても良いんですか!?」
余りにも食欲に対して素直な東雲に、思わずクスクスと笑ってしまう。先程の気まずい空気とは打って変わって、心地よい空気感になった。
きっと時間的にもお腹が空いていたのだろう。折角なら東雲のリクエストやらを叶えたい。
「何食べたい?」
「え、ガチのリクエスト良いですか?」
「何?」
「カツ丼食べたいです」
流石体育大学に通っているだけあって食べたい物が男らしいなと思った。昨日自分が言ったガッツリした物食べたいよね?という提案を覚えていたのだろうか。
いい意味で遠慮をし過ぎずに宮野さんの作るカツ丼が食べたいですとキラキラとした明るい表情をする東雲に、宮野は優しくその頭を撫でながら頷いた。
「じゃあ、作るね。その代わりお米買いに行きたいから手伝って貰っていい?」
「米くらい楽勝で持てます」
「だと思った。最近お米美味しくておばあちゃんから送られてくるお米食べきっちゃって」
「そういう力が必要な時は是非俺を頼って下さい」
「うん。ありがとう」
近くのスーパーまでは歩くと十五分程度だ。だが、最近外を歩く事が少なかった為丁度いいとも思った。ここ暫くは勉学に励むあまりに中々ゆっくり外を歩く事が出来なかったのだ。
東雲も十五分は余裕ですと言う為二人で立ち上がる。そしてそのまま家を後にし、日差しが差すひんやりとした気持ちの良い天気の中を東雲と二人で歩いた。
「昔から散歩するの好きだったの」
「なんかリフレッシュ出来ますよね」
「うん。東雲くんカツ丼だけで足りる?」
「……多分おかわりしちゃいます」
七瀬が昨日東雲はなんならおかわりとか言うタイプと言っていた事を思い出し笑ってしまった。そんなにおかしな事を言ったのかと不思議そうな顔をしている東雲に対して宮野はそっと腕に手を添えては笑顔になる。
「東雲くん本当に素直だね。おかわりしたくなる位美味しく作るね」
「俺めっちゃ幸せ者じゃないですか」
「あ、七瀬からLINEだ。」
片手にスマホと財布を持っていたのだが、この時間に通知音が鳴るという事はLINEを開かなくても七瀬からメッセージが来たのだと直ぐに分かる。
大丈夫?という七瀬からのLINEに宮野は良い事を思いついてしまったと、東雲の後ろに立ち東雲の優しい顔立ちの横顔の写真を撮った。
「え?」
「七瀬に送る。大丈夫って証拠になるでしょ?」
「えー!じゃあ俺も宮野さんの写真撮りたいです!」
「撮ってどうするの?」
「ホーム画面にして友達に見せます!こんな可愛い人に俺は料理作って貰って、体のケアして貰えるって自慢します!」
「東雲くん?スマホしまってね」
自分をホーム画面にしてと何も楽しくないだろうし、得も生まれないと思ったのだが東雲は本当にカメラを此方に向けた為、宮野は少し苦笑いをしてしまう。
少し残念そうにしながらスマホをしまう東雲に、本気でホーム画面に設定するつもりだったのかと笑ってしまうと、東雲が動きを止めてこちらを見た。
「宮野さん、LINEのアカウント教えて欲しいです」
「そういえば交換してなかったね」
その場に立ち止まり宮野がQRコードを見せると、東雲がそれを読み取り友達追加をする。何処か嬉しそうな東雲に今朝の自分もそうだったんだよと教えたくなったが、流石に恥ずかしくて辞めておいた。
話しているとあっという間にスーパーについた。トンカツ用の肉や玉ねぎと三葉などカツ丼に必要な物を全て買い揃え、セルフレジで会計をしていると東雲がキャッシュレス決済で当たり前のように支払う。
「ご馳走になるんですから当然です」
「お米代、高くない?」
「あ!ほんとだ!」
東雲はどこか抜けている所があると思っていたが、ここまで来ると逆に長所だと思う。自分が言うのも少しおかしいかもしれないが、変な人に騙されないでねと宮野が千円札を二枚渡すと、最悪力で勝てるんで!と東雲はとびきりの笑顔を見せた。
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