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さっき勢い余って彼にぶつけた言葉……
『私だって本当は……』
彼が羨ましかったんだ。私が手に入れられないものを転入してまだ間もないのに簡単に手に入れている彼の事が。楽しい日常・仲間達、私のルーティンにはないものが彼の中には溢れている。
私だって本当は友達と楽しく会話してみたい。頼まれ事だって「えー」って嫌がってみたい。
でも『真面目』というレッテルがそれを邪魔している。だから『真面目』とか言われたくないし思われたくもないんだ。
「どうしたら……桐野君みたいになれるかな」
「俺みたいに不真面目になりたいって事?」
心の中で呟いたつもりが声に出てしまっていたようだ。
「そ、そうじゃなくて……えっと」
桐野君が不真面目だなんて思ってないし、ただ桐野君みたいに毎日が楽しさに溢れている学校生活に憧れてるから出た言葉であって。
「やるべき事をいやそれ以上の事をずっと黙々とやるのって疲れるっしょ。だからたまには伸びてもええんちゃう? 両手を空に向かって『んー』って思いっきり腕を伸ばして肩の力を抜いたらええと思うよ。ほらこんなふうに」
桐野君は私の目の前で両手を上げて、んーっと腕を伸ばしながら私を見て微笑んだ。そんな桐野君を見てたら騙されてもいいかなと思い、同じように両手を上げて腕を伸ばしてみる。
「あっ」
伸ばしていた腕の力を抜いてふわっと手を下ろした時、なんだか世界がパッと明るく見えた。
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