中間雄輔

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 山下は帰宅後も興奮は取れず、悶々としていた。机に宿題を出して準備をしたものの、一向に鉛筆が動く気配はなく、ぼーっとしながら頬杖をついていた。  ご飯よ、早くいらっしゃいとお母さんの声がした。ああ、そう言えばお腹が空いた。山下は席を立ち居間に向かった。食卓テーブルには唐揚げとキャベツが乗っていた。  祐介、ちょっと話があるのと母が呼びかけた。最近、太り気味でベジファーストに実行するため、キャベツをもぐもぐしていた山下はん?と口を動かしながら答えた。  「あのね、お父さんの仕事の都合で遠くに引っ越さないと行けなくなったの。転校したばかりでやっと学校に慣れてきた祐介には本当に悪いんだけど、2学期から別の学校になっちゃうわ。ごめんね。」  母はお父さんが出世したからとか、新しいお家はとても広いとか、色々言ってきたが、山下にとって中間と離れるのは辛かった。  「ごちそうさま。わかったよ。」  山下はキャベツだけを食べ終え、自分の部屋に戻った。いくら嫌だとごねても、何も変えられないことは中学生の山下にはわかっていた。  ついさっきまで悶々としていた心は、締め付けられるようになり、山下は1人声を出さずに泣いていた。
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