大下和茂(高校生時)

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 僕は練習の邪魔にならないように、みんなが着替えたあと、そっと端っこから見るつもりだったので、着替え終わった人たちを見送っていた。    しばらくすると、ピーッとホイッスルの音が聞こえてきた。そろそろ見に行こうと席を立って、プールサイドに移動すると、大下くんが見えた。黒い水着とゴーグルと白い帽子はみんな一緒だったけど、なんか大下くんはすぐわかった。  大下くんは、速かった。飛沫をあげてクイックターンする姿はイルカみたいだった。しばらく見惚れていると、僕の隣に同じクラスの有本くんが座った。  「更衣室の床、掃除してくれたんやろ?ありがとう」  有本くんは体操着を着ていた。今日は親指を怪我しているので、見学してるとのことだった。で、みんなより遅れて更衣室を見たらキレイになってたからビックリしたと話していた。  「あ、みんなの物は僕、触ってないから。ごめんね勝手に……」  慌ててその場から離れようとしたら、まぁ座っててと裾を掴まれ戻された。  「そろそろ面白いものが見れるよ。まぁここで見ててよ」  「面白いもの?」  「うん。今からグループごとに対抗戦するから見てな。これ、負けた奴ら罰ゲームがあるからさ。」  有本くんはひひひっと笑っていた。
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