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記憶を遡って思い出したのは、元彼のこと。
初めての恋人が家に来るって連絡をくれたから、コンビニで飲み物やお菓子を買ってきた帰りの出来事だった。
家の近くの路地で、彼と知らない女の人が唇を重ねている。
私の存在に気づいた彼は「えっと、これはさ……」なんて言い訳を考え始めた。
「この女だれ?」
「お前は黙ってろって」
初めての恋人。
初めての浮気現場。
私の心は不思議と落ち着いているけれど、彼は家に来るって言ったんだから早くこの状況なんとかならないものか。
なんか二人で揉めだしたから時間がかかりそう。
「あんた彼女なんだ。私のがイイ女だったんだから仕方ないよねー」
「おい、余計なこと言うな」
私まで巻き込んでくるのか。
時間の無駄だなと思い「家に来るんでしょ」と彼に言葉をかければ、関係ない女の人が声を上げてきて煩い。
邪魔な人には去ってもらおうと、女の人の目の前まで近づき手を伸ばす。
女の人の顔をぐっと掴んだ私は、ただ一言「邪魔」と言って手を放すと、両頬の辺りが赤紫に変色しているのが見える。
女の人は顔を真っ青にしてその場から走り去ったので彼の方に振り返れば、後退った彼は尻餅をつき、あの女の人と同じ表情を浮かべている。
冷静だった私の鼓動は高鳴り「じゃあ、家に行こっか」と彼に手を差し伸べた。
その後、直ぐに彼とは別れることになり、そして出会ったのが今の彼。
全てを理解したとき私は高らかに笑う。
またあの表情を私は見たかったんだ。
理解できないこの状況に、彼と親友は恐怖でパニックになり、私の感情は満たされていく。
《完》
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