パンドラの箱

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「私の顔を見てどうかされましたか?」 「あ、えっと、先生ってカッコイイなあって」  一体私は何を言ってるんだ。  口から出た言葉に後悔を感じていると、先生は表情一つ崩さずお礼を言う。  なんというか、女性慣れしているというか。  これだけイケメンなんだから当然かもしれないけど、きっといろんな人と付き合ってきたんだと思う。  その日の帰り、私はまたも先生に呼び止められた。  沢山の生徒がいるのに何故私ばかり呼び止められるのか不思議に思いながらも、私は高鳴る鼓動に従うように先生についていく。  とくになんの用事とも言われずついてきてほしいと言われたけど、一体どこへ行くんだろうかと思っていると、ついた先は外にある用具室。 「先生、一体何を──」 「やっぱり覚えていたんですね」  何をするのか尋ねようとしたとき、言葉は先生に遮られた。  何を言っているのかわからないけど、鼓動は早鐘を打つ。  こんな状況に私は何故こんなにも鼓動が高鳴るのかと思ったとき、私は大きな勘違いをしていたことに気づく。  この鼓動は恋なんかじゃなくて恐怖。  ニヤリと笑みを浮かべた先生の顔を見て、私のパンドラの箱が開く。 「先生、あなたは……」 「忘れなさいと言ったのに、約束を破るなんて悪い子だ」  逃げようとした私の首を、背後から回されたロープが締め上げる。  呼吸ができなくて意識が朦朧とする。  思考が回らずパニックになる私の耳に、先生の笑い声が遠のいていくのを感じていたその時、私の首に巻かれていたロープは外れて私は噎せた。  それからのことはあとから聞いた話だけど、私と先生が用具室に入っていくのを見た友達が気になって後をつけたら、私の首を絞めている先生を見て、体当りしてくれたらしい。  あとは警察が来て事情聴取。  私は、幼い日に見たことを全て話した。  先生が人を殺していたのを見てしまったことを。  警察の人の話によると、先生は自分の生徒を今までに数人殺していたらしく。  たまたま新しく来たこの学校で私を見て、あのときの子供だとわかった先生は、私が覚えているか探っていたらしい。  小さい子どもなら問題ないと思っていたみたいだけど、成長した私を見て、覚えていたらまずいと思ったんだろう。  こうして開けられたパンドラの箱は、友達のお陰で無くなり。  私は今も生きている。 「ねえ、覚えてる? あの時先生に殺された学生」  友達に言われて昔の記憶を辿り、私はハッとして友達を見る。  そう、あの時の女の人は、友達に似ていたから。 《完》
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