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「ゆみこさん、気がついた?」
「えっ? 私……」
うそ、気を失っていた?
時計を見る。
「10分くらいだよ」
「ずっと見てたの?」
「ごめんね、でも初めてのことで心配だったから。脈も呼吸も正常だったから大丈夫とは思ったんだけど」
そっか、そうだよね。
久美もびっくりしたよね。
私は恥ずかしいやら嬉しいやらで、かけてあった布団を引っ張り上げて顔を半分隠す。
「あの、ゆみこさん?」
不安げな小さな声で私の顔を覗いてくる。
「ん?」
「ねぇ大丈夫? 私さ、初めてだったから、気をつけてたつもりだったけど、ちょっとやり過ぎちゃったのかなって、身体ほんとに大丈夫?」
「うん、大丈夫だからそんなに心配しなくても……って、初めて? えっ?」
「うん、初めて。ん?」
そうなの? 初めてであんなにも……
「あぁ、いや、何でもない」
「もしかして。私がゆみこさん以外の人とそういうことしたと思ってるの? 私がゆみこさんに告白したの、中三の時だよね」
「え、だって。高校の時はモテてたって言ってたし」
「だからってそんなことしないよ、私はゆみこさん一筋なのに」
心外だぁぁと言って、今度は久美が布団の中に潜りこむ。
「ごめんごめん、でも、だって……」
「だって、なに?」
「だって、あんなに上手だったら慣れてるって思うじゃない」
つい本音が漏れたら、ガバッと布団から顔が出てきた。
「上手だった?」
「え、あ、うん」
私の反応に満足げなのは何で?
「気持ち良かった?」
「それは、まぁ、そうだね」
「そっか、そっか」
どんどん機嫌が良くなっている感じじゃないか。
まぁでも、そんなふうにニコニコされたら、私だって幸せな気分になる。
つられて笑ってしまっているしね。
正直に言ってしまおう!
「久美、とっても気持ち良かったよ」
あれ、真顔になった?
あ、口を一文字にしてる。
これはニヤけるのを我慢する、久美の癖。昔から知ってる、照れた時の仕草だ。
「ねぇ久美、映画もう見なくてもいい?」
結局、途中までしか見てないけれど、今から続きを見る気にはなれない。
「うん、いいよ」
「なら、このままイチャイチャしてようか?」
「うん」
だって。
初めてってことは、まだ誰にも触れられてないんでしょ。
「いい?」
「ん?」
私が、私だけが触れてもいいの?
「私も久美が欲しい」
「は? え?」
「嫌?」
「いや、じゃないけど、心の準備がまだ」
「自分だけじゃないんだよ、私だって久美を求めてるの」
「あ、はい」
「いいよね?」
「……ん、嬉しい」
真っ赤な顔をして目をつむった君へ、私はキスを落とす。
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