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お昼休みに廊下ですれ違った。
「あ、日直さん?」と声をかけられた。
「いえ、今日は違います」と言ったのに。
「あら、そう。放課後時間ある? 頼みたいことがあるの」
人の話聞いてます? 日直じゃないっての。
「あぁ、はい」
暇だから行くけどーーいや、用があっても貴女の頼みなら何をおいても行くけれど。
「まずは、これをシュレッダーにかけて」
「次はこれ、ホッチキスで止めてね」
「ありがと、はい、どっちがいい?」
散々雑用を言いつけ終わった後で、今日は飲み物をくれた。
コーヒーとココアの二択だった。
「こっち」
「あら、大人なのね」
コーヒーを選んだら、そんな風に言うから。
「子ども扱いしないでください」
思わず口をついた。
はっ、しまった。こんな強い口調で言うつもりなんてなかったのに。
私は貴女に憧れて、少しでも貴女に近づきたい。でも貴女にとって私は、ただの子供で。
いや、そもそもこんなことでイラつくこと自体子供じゃないか。
「ごめんなさい」
貴女はきちんと謝ってくれたのに、目も合わせられず。
「いえ、今日は帰ります」
逃げるように帰った。
その後も、何事もなかったかのように何度も用事を頼まれた。
そのおかげで、少しずつ打ち解け、話も出来るようになってきた。未だに見つめられたら顔が熱くなるのは変わってないけれど。
相変わらず用事はただの雑用で、私じゃなくてもいいようなもの。
「先生、なんでいつも私なんですか? 暇そうにしてたから?」
「一番、気になったんだよね」
「えっ?」
それって? どういうこと? 心臓が暴れ出した。
「いつも、外を見てたでしょ? 私の授業、つまらない?」
「は?」
なんだ、そういうことか。
視線を逸らすために外を眺めていたっけ。
「そんなことないですよ」
「じゃ、私のこと嫌い?」
「そんな訳ない......じゃないですか」
顔に熱が集まるのを自覚して、何を言ってるのか分からなくなった。
「え、どっち?」
貴女はクスクスと笑っていた。
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