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キスは唇から首すじへと移動する。ぎこちなさは初めてだからだろうか。
私を求めてくれている、そのことだけで私の心は高揚する。なぜなら、私もずっと求めていたから。
胸に手が添えられ、最初は遠慮がちに動いていたが徐々に大きさを確かめるかのように周りから摩りはじめる。
力加減や揉み具合も私好みで気持ちいい。思わず出た吐息が少し恥ずかしい。
服の裾から手が入ってきた。温かい手だった。その手に触れられる私の肌も熱を帯びる。
きっとこれから私はこの温かい手で溶かされる……
「ちょ、待って」
微かな理性が働いた。
「あ、ごめん」
まるで悪さを怒られた仔犬のように、眉が下がっている。
違うよ、そうじゃなくて。
「ここで?」
きっとこれ以上のことをされたら、動けなくなる。
「あ、えっと……ベッド行く?」
自信なさげな表情も可愛いと思ってしまう。
「うん」と頷けば、ホッとする顔も然り。
手を引いて起こしてくれて、そのまま手は繋いだまま誘導してくれる。
大丈夫だよ、別に手を離しても逃げたりしないのに。そう思っても、繋いだ手の温もりに安心感を感じるのは私も一緒だ。
「ゆみこさん、ほんとにいいの?」
「ん、いいよ」
同じ気持ちだよ、と視線を絡める。
「嬉しいっ」
抱きつかれて耳元で囁くからくすぐったくて。
「好き」
「嬉しい」
「可愛い」
ずっとそんな甘い言葉を言い続けてくれるから。
私も好きよと伝えたいのに、私の口から発するのは甘い嬌声ばかりで。
出会ってからはもう7年の月日が経っているというのに、今日はずっと胸がドキドキしっぱなしだ。
あの頃は、こんなふうに誰かを好きになるなんて思ってもみなかったな。
他人に心を開くことが苦手な私が、今、身も心も交わろうとしている。
久美の体温はとても心地よくて酔いしれてしまう。
そうして私は、久美に抱かれながら意識を飛ばした。
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