seek each other

8/8
前へ
/46ページ
次へ
「ゆみこさん、気がついた?」 「えっ? 私……」  うそ、気を失っていた?  時計を見る。 「10分くらいだよ」 「ずっと見てたの?」 「ごめんね、でも初めてのことで心配だったから。脈も呼吸も正常だったから大丈夫とは思ったんだけど」  そっか、そうだよね。  久美もびっくりしたよね。  私は恥ずかしいやら嬉しいやらで、かけてあった布団を引っ張り上げて顔を半分隠す。 「あの、ゆみこさん?」  不安げな小さな声で私の顔を覗いてくる。 「ん?」 「ねぇ大丈夫? 私さ、初めてだったから、気をつけてたつもりだったけど、ちょっとやり過ぎちゃったのかなって、身体ほんとに大丈夫?」 「うん、大丈夫だからそんなに心配しなくても……って、初めて? えっ?」 「うん、初めて。ん?」  そうなの? 初めてであんなにも…… 「あぁ、いや、何でもない」 「もしかして。私がゆみこさん以外の人とそういうことしたと思ってるの? 私がゆみこさんに告白したの、中三の時だよね」 「え、だって。高校の時はモテてたって言ってたし」 「だからってそんなことしないよ、私はゆみこさん一筋なのに」  心外だぁぁと言って、今度は久美が布団の中に潜りこむ。 「ごめんごめん、でも、だって……」 「だって、なに?」 「だって、あんなに上手だったら慣れてるって思うじゃない」  つい本音が漏れたら、ガバッと布団から顔が出てきた。 「上手だった?」 「え、あ、うん」  私の反応に満足げなのは何で? 「気持ち良かった?」 「それは、まぁ、そうだね」 「そっか、そっか」  どんどん機嫌が良くなっている感じじゃないか。  まぁでも、そんなふうにニコニコされたら、私だって幸せな気分になる。  つられて笑ってしまっているしね。  正直に言ってしまおう! 「久美、とっても気持ち良かったよ」  あれ、真顔になった?  あ、口を一文字にしてる。  これはニヤけるのを我慢する、久美の癖。昔から知ってる、照れた時の仕草だ。 「ねぇ久美、映画もう見なくてもいい?」  結局、途中までしか見てないけれど、今から続きを見る気にはなれない。 「うん、いいよ」 「なら、このままイチャイチャしてようか?」 「うん」  だって。  初めてってことは、まだ誰にも触れられてないんでしょ。 「いい?」 「ん?」  私が、私だけが触れてもいいの? 「私も久美が欲しい」 「は? え?」 「嫌?」 「いや、じゃないけど、心の準備がまだ」 「自分だけじゃないんだよ、私だって久美を求めてるの」 「あ、はい」 「いいよね?」 「……ん、嬉しい」  真っ赤な顔をして目をつむった君へ、私はキスを落とす。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加