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離婚をしたがらない理由
「璃々子さん、今日からうちの事務所で事務員として働いてみない?」
「え?」
翌朝、朝早くから出掛けた雫さんを見送った私が啓介さんと由季くんの朝食を用意してから共にテーブルに着くと、トーストを食べてからコーヒーを一口飲んだ啓介さんがそう提案して来てくれた。
「離婚した後の事を考えて、自立出来るように職探しもしないとならないだろう? だけど今の状況で他へ働かせる訳にもいかないし、うちも人手不足で事務作業してくれる人が居てくれると助かるから、璃々子さんさえ良ければ是非」
「ありがとうございます、精一杯頑張るのでよろしくお願いします」
「それじゃあ、由季、お前は先に事務所に行って、仕事をしていてくれ。俺は後から璃々子さんを連れて事務所へ行くから」
「分かった。俺が璃々子さんの送迎を担当したいところだけど、どこで監視されるか分からないもんな……」
「そうだ。なるべくお前と璃々子さんが二人きりにならないようにしないとならない。ゴネてる相手はお前と彼女の仲を特に疑ってくるだろうからな」
「すみません、お手数おかけして……私が一人で行動出来れば良いんですけど」
「相手の出方が分からない以上、璃々子さんが一人で行動するのは危険だから、俺らがしっかりサポートする。これが預かる者としての最低限の役割だから、気にする必要は無いさ」
「はい、ありがとうございます」
由季くんは勿論だけど、啓介さんも私の為に色々考えてくれて、私は本当に恵まれた環境に身を置いているんだと再確認した。
朝食の後、ひと足先に由季くんが出勤して行き、私と啓介さんは分担して家事をこなす。
由季くんから遅れる事、約一時間半、啓介さんと共に事務所へやって来た私は早速、資料整理を任された。
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