裏切りと諦め

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 それからも、貴哉は相変わらずだった。  嘘でも他に帰りが遅くなる理由を作ればいいのに、まるで馬鹿の一つ覚えみたいに『仕事が忙しい』の一点張り。  そんなんじゃ、例え不倫している事に気付いてなくても怪しむと思う。  最近では悪化して、休日にも仕事を理由に出掛ける日が増えていく。  以前の私なら、モヤモヤが募るだけだった。  だけど、証拠集めをしている今は逆に嬉しい。  だって、不倫相手と会う回数が増えれば増える程、証拠が増えていくのだから。  依頼をしてから二週間後、杉野さんの方から呼び出しがあって、市外のカフェで落ち合う事に。 「お待たせしました」 「ああ、すみませんわざわざこんなところまで」 「いえ」  自由の無い私は、あまり外出が出来ない。それには理由があって、貴哉は毎日決まった時間に電話を掛けて来るのだ。しかも、家の電話に。  初めは何故好きでも無い相手をそこまで束縛するの? なんて思ったけれど、女が居ると知ってからその理由に合点がいった。  彼は営業の仕事をしていて外回りが多く、仕事中にも女と会っているのかもしれないと。  だから、私が自由に出掛けて万が一どこかで鉢合わせしないように、私の居場所を常に知っておきたいのだと。
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