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5章 16 恐ろしい力
「あ……何だか、身体が温かくなってきたみたいだわ……」
ロザリンがポツリと呟くと、目を閉じた。私は全神経を集中させて顔の傷が元通りになるように祈り続けると徐々にロザリンに変化が起こり始めた。
彼女は眠くなってきたのか、ウトウトしはじめ……ついにベッドに倒れ込んでしまったのだ。
眠ってしまったのなら、尚更都合がいい
私が使っているのは禁忌魔法、本来なら使ってもいけないし、誰かにみられるわけにもいかない魔法なのだから。
ロザリンが眠っている今のうちだ。
私はさらに集中してロザリンの顔の傷が元通りになるように祈り続けた。
すると、ついにロザリンの火傷跡に変化が起こり始めたのだ。徐々にではあるが、火傷痕が小さくなっている。
「傷が……小さくなっていくわ……!」
その時、握りしめているロザリンの手に違和感を抱いた。
「え……?」
ロザリンの手が明らかに小さくなっているのだ。既に着ている服はサイズが合わなくなり、ぶかぶかになっている。
「ま、まさか……!」
慌ててロザリンの顔を見ると、あれほど酷かった顔の火傷は何事も無かったかのように消えている。
そう、顔に大火傷をする前のロザリンの姿に戻っていたのだ。
「そ、そんな!」
慌ててロザリンの手を離すも、彼女の若返りは止まらない。今ではもうすっかり幼児の姿にまで戻ってしまっている。それでもまだロザリンは眠ったまま目を覚まさない。
「お願い! 止まって!! 止まってよ!!」
深い眠りに就いているロザリンを抱き上げ、必死で叫ぶ。これ以上小さくなっては今に……!
「お願いだから止まってー!!」
私は心の底から叫んだ。するとその瞬間、自分の魔力がロザリンに流れ込む力が止まるのを感じ取った。
「と、止まった……?」
恐る恐る腕の中のロザリンを見つめ……。
「!!」
私は声にならない悲鳴を上げた。
ロザリンは完全に赤子の姿に戻ってしまっていたのだ。
「そ、そん……な……」
私は腕の中のロザリンを放心状態で見つめた。
どうしよう……ロザリンの顔の火傷を治すつもりが、まさか彼女の時を戻してしまうなんて。
「……なんて……恐ろしいことをしてしまったの………?」
ロザリンは気持ちよさそうに腕の中で眠っているが、私は自分の力が恐ろしくて堪らなかった。
眠っているロザリンをベッドにそっと寝かせ、彼女が着ていた服をブランケット代わりに掛けると改めて彼女を見つめる。
「ロザリン……」
とてもではないが、もう一度禁忌魔法を使う気にはなれなかった。もし、失敗すれば……今度は彼女の命を奪ってしまいかねない。
どうすれば良いのか分からずに呆然と立ち尽くしていたその時――
『ここか!』
『間違いないんだろうな!?』
『早く開けろ!!』
小屋の周囲が騒がしくなり、ガチャガチャと鍵が開く音が聞こえた次の瞬間。
「クラリス!!」
扉が開かれ、エイダが部屋の中に飛び込んできた。その後からリオン、アンディ、ザカリーにセシルとフレッドの姿もある。
「クラリスッ!!」
エイダが駆け寄ってくると、私を強く抱きしめてきた。
「エ……エイダ……」
「良かった……! クラリスが無事で……ほ、本当に私……ずっと、ずっと心配していたんだから……!」
エイダは私を抱きしめ、肩を震わしている。
その声は……涙声だった――
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