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終章 ここが私の生きる世界 <完>
エイダが私の正体がユニスだと分かっていた……一体どんな気持ちで今まで私に接してきてくれていたのだろう?
「ユニスが何故外見が変わってしまったのか、何故名前を変えて現れたのか……事情は全て分かったていたわ。だって私には人の心の声が聞こえてしまうから。アンディやセシル達の心の声が聞こえて理由が分かったわ」
「そうだったの……ごめんなさい。本当のことを言えなくて……」
思わず俯くと、エイダにその手を取られた。
「謝らないで、ユニス。だってあなたは魔術師協会に監視されているのでしょう? 仕方ないわよ。だからこれからも私は何も知らないフリをする。皆の前ではあなたのことをクラリスと呼ぶわ。でも……2人だけの時はユニスと呼ばせてくれる?」
「勿論よ。だって両親が付けてくれたこの名前が大好きだから……ありがとう、エイダ。それに今まで黙っていてごめんなさい……」
胸に熱いものがこみ上げてくる。
私の大切な親友、エイダ。何度彼女に自分がユニスだと告げたかったか……。けれどエイダは私が誰か分かっていた。分かっていたうえで、何もしらないふりをして昔と変わらない態度で接してくれていたのだ。
「謝るのは私のほうよ。だって自分の本当の年齢も偽っていたし、人の心が読めることも」
エイダの目も赤くなっている。だけど、それを言うなら私だって重要な秘密を抱えているのだ。
私は転生者で、ここはゲームの世界だということを。
今まで、誰にも話せなかったけど……今のエイダになら私の秘密の全てを話せそうだ。
「ねぇ、エイダ。私にもまだ秘密があるの。話を聞いてくれる?」
「え? 何?」
エイダが目を輝かせる。
「私、実はね……」
この日……。
私とエイダは真夜中まで話に花を咲かせ……2人で同じベッドで眠りに就いたのだった――
****
――翌日
エイダと2人で一緒に女子寮を出ると、門の前で『ニルヴァーナ』のヒーローたちが勢揃いしていた。
そして私達の姿を見ると笑顔で手を振ってくる。
「ほら、ユニス。皆、あなたに好意を寄せているから全員で迎えに来たのよ」
エイダが耳元で囁いていくる。
「え……? そうかしら? アンディはともかく、セシルやフレッドは魔術協会空渡しを監視するように言われているのよ?」
「それじゃ、ザカリーはどうだと思うの? それこそユニスにくっついてくる意味は無いんじゃないのかしら? 大体私が人の心を読めるのは知っているでしょう?」
「それはそうだけど……」
でも、本当に全員が私に好意を寄せているのだろうか……?
2人でヒソヒソ会話をしながら、皆の元へ近づいて行くとザカリーが真っ先に声をかけてきた。
「2人で何を話していたんだ?」
「いいえ? 別にっ。ね? クラリス」
エイダが私の腕に絡みついてきた。
「そうね」
まさか4人の話をしていたとは言えず、頷く。
「昨夜はね、2人だけで一晩中話をしたのよ。それにクラリスは私の部屋に泊まったったのだから」
「本当に2人は仲が良いね。何となく妬けるよ」
セシルが私達に笑顔を向けると、アンディが話しかけてきた。
「ところで、クラリス。昨夜の話の続きだけど……」
するとそこへフレッドが割り込んできた。
「おい! お前は昨夜勝手な真似をしておいて、まだ凝りていないのか?」
「どうして、君にそんなこと言われなくちゃならないんだい?」
平然と答えるアンディ。
そのとき。
「おはよう、皆」
背後から声をかけられ、振り向くと何とリオンの姿があった。
「リオンッ! お前、何だってここにいるんだよ!」
「そうだ! クラリスを誘拐しておいて良く顔を出せたな!?」
似た者同士のザカリーとフレッドが同時に声をあげる。
「それは皆の姿が偶然見えたからだよ。でも……お邪魔みたいだから……」
そしてチラリとリオンは私に視線を送る。
「?」
首を傾げると、リオンは私に話しかけてきた。
「クラリス。君には色々迷惑をかけてしまったから、今度なにかお詫びを……」
「そんな必要はないよ」
「そうだ、もうクラリスには構わないでくれないか?」
何とあの穏やかなセシルとアンディがリオンを牽制した。
すると……。
「あーもう! 皆駄目よ! クラリスは私の物なんだから誰にも渡さないわよ! あんな人達放っておいて行きましょう?」
エイダが笑顔で私の手を引くと、駆け出した。
「え!」
「お、おい!」
「ちょっと待ってよ!」
「置いていくなって!」
背後ではヒーローたちの戸惑う声が聞こえるも……。
「ええ、そうね!」
私も駆けながら、笑顔でエイダの手を握りしめた。
このゲームのヒーロー達との関係が、どうなっていくのか先の事はまだ何も分らない。
けれど少なくとも、私はこのゲームの世界の筋書きを変えることが出来たのだと思う。
大火傷を負ったロザリンは無垢な赤児に戻り、両親と共にやり直すチャンスを得られた。
リオンは両親を失っていないし、ハイランド家はロザリンの呪縛から逃れることが出来たのだ。
私は……改変された、『ニルヴァーナ』の世界でこれからもずっと生きていく。
大切な人たちと共に――
<完>
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