2章7 婚約解消の条件

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2章7 婚約解消の条件

「リオン。この際だから聞くけど、ロザリンさんのこと好きなの?」 緊張する気持ちを押さえながらリオンの目を見つめた。一体、リオンは何と答えるのだろう? 「どうなんだろう? 良く分からないな」 「え? 良く分からないの?」 まさか、そんな答えが返ってくるとは思わなかった。 「うん、でもロザリンと一緒にいて楽しいのは確かだよ。クラスメイトだし、何より気が合うからね」 笑顔で答えるリオン。 一緒にいて楽しい? それでは私といた時はどうなのだろう? 楽しくは無かったのだろうか? だから、彼女の言われるままに私に婚約解消のお願いを……? 「今まで聞かなかったけど、最近リオンの家に遊びに行ってもあなたは出掛けていなかったわ。もしかしてロザリンさんと会っていたの?」 「そうだよ。ロザリンに誘われて2人で勉強したり、魔法の勉強をしていたんだ。彼女は魔力も強いからね。だけどユニスは、ほら……魔力が無いだろう?」 「そうよね、確かに私は魔法が一切使えないわ」 傷つく心を抑える為に、更に自分の手を強く握りしめる。 「ユニスは両親が決めた婚約者だけど、実際は友達のようなものだろう? 婚約者と言われても、いまいちピンとこないんだよね。結婚している姿なんて尚更だよ。ユニスだってそう思わない?」 リオンは完全に決めつけた言い方をする。 「……確かにそうかもね。だけど、ロザリンさんとはどうなの? 将来結婚している姿を想像できる?」 「ロザリンとか……」 リオンは少し考えこむ素振りを見せた後、頷いた。 「うん、少なくともユニスよりは想像できるかな」 「そ、そうなのね」 そこまで、はっきり言われてしまえば仕方がない。 リオンの気持ちは分かった。けれど、このまま婚約解消に応じるわけにはいかない。 何故なら、私にはするべきことがまだあるからだ。 「それで、ユニス。婚約解消はしてくれるのかな?」 申し訳無さそうリオンが尋ねてきた。 「ええ、いいわよ」 「え? 本当に?」 途端にリオンが満面の笑みを浮かべる。 そう……私が婚約解消に応じることが、そんなに嬉しいのね?  「でも、その代り条件があるの」 「条件? どんな条件なの?」 「来月、リオンの12歳の誕生日で誕生パーティーをするでしょう? 婚約解消はその後にしてもらいたいの。おじ様とおば様を驚かせたくないから」 「そうだね。確かにユニスの言うとおりかも。父様も母様も、ユニスをパーティーに招くと言っていたから」 リオンが私の話に頷いた。 「そうでしょう? 婚約解消をしてしまったら、気まずくてパーティーに参加できないわ。でも大丈夫よ。無事に誕生パーティーが終われば、婚約解消しましょう」 尤もらしい話で婚約解消を引き伸ばすが、決してリオンに未練があるからではない。元々私は、ヒロインがリオンの前に現れたら身を引くつもりだったのだから。 ただゲームの筋書き通りなら、リオンの12歳の誕生パーティーの日に彼の魔力が暴走して屋敷が火事になってしまう。 そしてリオンの父は、彼を助けるために火事で死んでしまうのだから。 「アハハハ。ユニスは変なことを言うね。誕生パーティくらい、無事に終わるに決まっているじゃないか」 「そうよね。無事に終わるわよね。大げさな言い方をしてしまったわね」 私もリオンと一緒に無理に笑う。 「それじゃ話も終わったことだし、僕はもう行くね。ロザリンをあまり待たせるわけにはいかないから。今日はこれから2人で市の図書館に行くんだよ」 「そうね、もう行ってあげて。楽しんできてね」 「うん、今日はわざわざありがとう。またね!」 リオンは笑顔で手を振ると、背を向けて走り去っていった。 「リオン……ロザリンと2人で、図書館に行くのね……」 遠ざかるリオンの背中を寂しい気持ちで見つめる。 もう彼の中では、私はいらない存在となっているのだろう。 「私も、調べ物をしなくちゃ」 踵を返すと、足早に学園の図書室へ向かった。 リオンの誕生日まで、一ヶ月を切ってしまったが、未だに魔力の暴走の原因を突き止めることが出来ていない。 何とかリオンの魔力の暴走を防いで、ハイランド家の悲劇を食い止めなければ。 大好きなおじ様とおば様を救うためにも――
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