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1章4 隣の席
「誰だろう?」
「転入生か?」
「ちょっと格好いいわね」
生徒達はリオンを見て、一斉に騒ぎ出す。すると先生が口を開いた。
「皆、静かにしなさい。今日からこのクラスに、新しい仲間が増えることになった。さ、君。挨拶をしなさい」
「はい」
先生に促され、返事をするリオン。
「皆さん、初めまして。リオン・ハイランドです。今日からよろしくお願いします!」
まだあどけない少年のリオンは笑顔で皆に挨拶をした。
すると、女子生徒たちはますますキャアキャアと騒ぐ。
「ふ~ん意外。あんな無邪気な顔で笑うことが出来たんだ」
頬杖をつきながらポツリと呟くと、一瞬リオンと目があった。
え? もしかして私がこのクラスにいることに気付いたのだろうか?
「それではリオン。君の席だが……」
先生が座る席を指定しようとした時。
「あの、先生。僕、座りたい席があるのですが」
「何? どこがいいんだね?」
すると、リオンが私を真っ直ぐ指さしてきた。
「あの子の隣りの席が良いです」
「「ええっ!?」」
私と、隣りの席の男子が同時に声を上げる。
ちょっと、リオン! 一体何を言ってくれるの!?
すると再びクラスがざわめき、視線が一気に私に向けられる。
「どういうことだ?」
「あの席、ルイスじゃないか」
「ひょっとして転校生と知り合い……?」
「何故、ユニスの隣が良いのだね? 2人はもしかして知り合いか?」
先生がリオンに尋ねる。
「はい、先生。僕と彼女は……」
冗談じゃない! ここで私達が婚約者だと知られたら、大騒ぎになってしまう!
「はい! 友達です!」
咄嗟に右手を上げてリオンの言葉を封じると、彼は驚いた様子で私を見つめた。
「そうか、友達だったのか。分かった、ならユニスの隣に座ると良いだろう」
「え? せ、先生。僕はどうすれば……」
隣りの席の男子生徒、ルイスがオロオロした様子で手を上げた。
「ルイス、確か君は最近黒板の文字が見えにくいと話していたな。教壇の前の席が空いているから、席を移りなさい」
「え?」
ルイスは驚いた様子で、何故か私に助けを求めるように視線を送る。
あ〜あ……可哀想に。でも、ごめんね。私にはどうすることも出来ないのよ。
今度はクラス中の視線がルイスに注がれる。
「……分かりました」
ルイスは渋々? カバンを持って立ち上がると、教壇の前に進む。それとは入れ替わりにリオンが私の隣にやってくると着席した。
「おはよう、ユニス」
「うん、おはよう……リオン」
「ユニス、これからよろしくね」
「うん、こちらこそ……でもまさか同じクラスになるとは思わなかったわ」
「実はね、学校に頼んだんだ。ユニスと同じクラスにさせてくださいって」
「え? そうだったの?」
まさか、そんな希望が叶うなんて。第一、リオンと婚約者の話はゲーム中で語られることは殆ど無かった。
いや、むしろリオンは婚約者の存在を疎ましく感じていたはずなのに。
やはり、髪の毛を褒めてあげたことが相当嬉しかったのかもしれない。
もともとリオンがヒロインに固執されるようになったのも彼女に素敵な髪ね、と言われたことがきっかけだったのだから……。
授業が始まり、隣の席の リオンを横目でそっと見た。
真剣な表情で授業を聞くリオンは新鮮だ。
何故ならゲーム中の彼は素行が悪く、授業すらまともに出てはいなかったからだ。
これからリオンは様々な不運に巻き込まれ、性格が歪んでいく。
私がその不運を事前に防げば、リオンも私も破滅することはない。
リオン、あなたのことは私が守ってあげるから――
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