取材

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ひと通り録り終わると、今度は倉木と大河のインタビューに移る。 カメラマンが構図を確かめ、ちょうど水槽が後ろに映り込む位置に椅子を置いた。 「改めまして、アートプラネッツの代表取締役でいらっしゃる、冴島 大河さんにお話をうかがってまいります。冴島さん、どうぞよろしくお願いいたします」 「こちらこそ、よろしくお願いいたします」 挨拶をしてから、早速倉木は質問を始めた。 「アートプラネッツの作り出すデジタルアートは、国内はもちろん、今や海外でも大きな注目を集めています。体験した人は皆、初めての感覚に驚き、感動して、最後には笑顔になる。その世界観は、どんな想いで作り上げていらっしゃるのでしょうか?」 「はい。我々は常に、観てくださる方の心に何かを残せたら、という想いで制作しています。デジタルアート、と言えば、その言葉の響きだけで批判的に捉えられることもあります。芸術とは違う、アートと名乗るな、といったご意見も頂きます。それはごもっともだと我々も受け止めています」 「え、そうなのですか?」 倉木は声のトーンを落として眉根を寄せる。 「はい。どんなご意見も、それはその方の真実だからです。100人いたら100人全員に、良い作品だ、と言われることなんてあり得ません。100通りのご感想があって当然です。我々が一番恐れているのは、何も感じない、と言われることです。たとえば、この作品はなんか嫌いだ、と思われたとしても、それはその方のアートに対する心を、ほんの少しでも動かせたことになります。自分達の作品から、何かを感じ取ってもらえたら。我々はその想いで日々制作に励んでいます」 倉木は深く頷きながら耳を傾ける。 「もちろん、感動した、良かった、とお言葉を頂くと、我々も嬉しくなります。子ども達が、楽しい!と笑顔で体験してくれていると、作って良かったなと心から思います。海外の方に、日本は美しいと感じて頂けたら、身が引き締まる思いです。アートに正解も不正解もない。本物か偽物か、ではなく、良いものは良い。それが我々の確固たる信念でもあります」 大河の力強い言葉に、倉木はメモを取ることも忘れてじっと聞き入っていた。
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