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「えっと、君。もしかして千秋さんの事務所のモデルさん?」
可愛らしい顔立ちで、華やかな雰囲気のその子は、おそらくそうに違いない。
「あ、はい。オフィス フォーシーズンズの由良と申します」
顔を上げて答え、ペコリとお辞儀をする若い女の子は、まだ18歳くらいだろうか。
「へえ、可愛い名前だね。どういう漢字を書くの?」
「理由の由に、良し悪しの良しで、由良です」
「そうなんだ。俺は新郎の大河と同じ、アートプラネッツの…」
名を名乗ろうとした時、大階段の下から、「おーい、透!ブーケトス始まるぞ」と、吾郎の声がした。
「ああ、今行く!」
大きく返事をしてから、女の子に向き直る。
「ごめん、ビデオ撮らなきゃ。早く下りよう」
女の子はクスッと笑う。
「はい、行きましょ。アートプラネッツのとおるさん?」
「え?あ、うん」
トントンと軽やかに階段を下りながら、女の子は透の顔を見上げる。
「とおるさんの漢字はどう書くんですか?」
「透明人間の透だよ」
すると女の子は、あはは!と声を上げて笑い出した。
「透明人間にしては、おしゃべり上手ですね」
「そうなんだよ。いっつもそれで、うるさい!って怒られる」
「ふふっ、私もなんです。だって気がついたらしゃべっちゃってるんだもん。黙ってじっと考えるとか、無理」
「分かるー!」
意気投合しながら、二人はガーデンに向かう。
既に瞳子の後ろには、大勢の女の子が興奮気味に集まっていた。
透はすぐさまビデオカメラを構える。
すると由良と名乗った子が、集まった女の子達の輪に入れず、少し離れたところで立ち止まった。
(あ、悪かったな。俺と話してたばっかりに出遅れて。きっとブーケをキャッチしたかっただろうのに)
申し訳なく思いながらカメラを回していると、瞳子は後ろを振り返って女の子達を見渡してから正面に向き直り、両手で思い切り高くブーケを後ろに投げた。
透がカメラでブーケを追うと、キャー!と手を伸ばした女の子達を飛び越え、ブーケは由良の手の中にトスッと落ちた。
「…え?」
透も由良も、思わずポツリとこぼす。
が、次の瞬間、透はカメラから顔を上げて由良に声をかけた。
「やったね!由良ちゃん。良かったね!」
「うん!嬉しい!」
満面の笑みでブーケを両手に抱えて頷く由良に、透も思わず笑顔になった。
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