チョコの進捗

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「ただいま」 「お帰りなさい!大河さん」 玄関を開けると、瞳子が笑顔で出迎えてくれる。 それだけで大河の心は、ふわっと軽くなった。 「ただいま、瞳子」 優しく抱き寄せて額にキスをする。 瞳子はにっこり微笑んだあと、ん?と視線を落とした。 「大河さん、すごい荷物ね。何かお買い物してきたの?」 「え?ああ、これね」 そう言って、手にしていた袋を開けてみせる。 「なあに?わっ、お菓子がいっぱい!」 中には、ありとあらゆるスナック菓子やチョコレートが入っていた。 「どうしたの?ハロウィンで配るにはまだ早いし」 「うん。これ、透に買ったんだ」 「透さんに?」 「ああ。最近あいつ、ちょっと元気がなくて。チョコも食べないし」 「えっ?あの透さんが?」 「そう。あの透が」 「そうなんですね。それは心配…」 うつむく瞳子を見て、大河は急にハッとした。 (もしかしてあいつ、瞳子のことを想って?) いつもなら 「そろそろアリシアの顔が見たいー。エネルギーが切れるー」 と騒ぎ出す頃なのに、最近はアリシアのアの字も言わない。 (もしや、今頃になって失恋の痛手がジワジワと?) 一度考え出すと、そうに違いないと思えてくる。 「大河さん?大丈夫?」 瞳子が心配そうに顔を覗き込んできた。 可愛くて優しくて、世界でたった一人の愛する人。 瞳子を手放すことなど、絶対にあり得ない。 たとえ透の為でも。 「瞳子…」 たまらず大河は瞳子を抱きしめた。 「大河さん…。あの、透さんのことは心配だけど、大河さんまで思い詰めないで。私に出来ることなら何でもするから。ね?」 瞳を潤ませながら見上げてくる瞳子に、大河は切なさが込み上げる。 「瞳子…。ずっとそばにいて欲しい。俺の望みは、ただそれだけだ」 「もちろんよ。ずっと大河さんのそばにいさせてね」 「ああ。瞳子、ありがとう」 玄関にも関わらず、二人はしばらく互いを抱きしめ合っていた。
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