驚きの展開

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「きっと結婚式では、君への想いが溢れてどうしても熱いキスになりそうだよ。でも今は、心から君を大切に想ってキスを贈りたい」 そう言うと由良の髪に手をくぐらせ、透はゆっくりと顔を寄せていく。 由良の潤んだ瞳に見つめられ、透の心はキュッと切なく傷む。 やがて由良がそっと目を閉じ、透はその可愛らしい顔に一瞬微笑んでから、優しく甘く唇を重ねた。 うっとりと身を委ねてくる由良を抱きしめ、透は愛を込めて長い長いキスを贈る。 ようやく身体を離すと、由良はふう、と吐息を洩らして、照れたように赤い顔でうつむいた。 「大好きだよ、由良」 もう一度抱きしめ、耳元でそう囁いた時だった。 由良が急にピタリと身体を固くして、透の顔を見上げる。 「え?どうかした?」 驚いた透が慌てて尋ねると、由良の顔からはさっきまでの可愛らしい表情が消えていた。 「透さん、なんでいきなり体育会系なの?」 「……は?」 透が間の抜けた声で聞き返す。 「せっかく胸キュンのシーンだったのに、いきなり『由良』なんて呼ぶんだもん。部活の顧問の先生思い出しちゃった」 「ええ?!君、顧問の先生とつき合ってたの?」 「は?なんでそうなるの?」 「だって、顧問の先生が下の名前を呼び捨てにするなんて。苗字を呼び捨てにするなら分かるけど」 「いや、だから。苗字を呼び捨てにされてましたよ?」 「なんて?」 「だから『由良』って」 へ?と、またもや透は間抜けな声を出す。 「由良って、君の苗字なの?」 「そうですよ。初めて会った時に、由良と申しますって挨拶したでしょ?」 「ええー?いや、俺、てっきり下の名前だとばっかり…」 「初対面の人に下の名前で挨拶なんてしないでしょ?私、そんなに軽いキャラに見えました?」 「いや、違うけど。由良って苗字の人、会ったことなかったから」 「確かに珍しいですよね。田中ですって名乗ったら、すぐに苗字だと思ってもらえるでしょうけど」 そうそう、と透は頷く。 「じゃあ、君の下の名前は?」 「亜由美です。フルネームは、由良 亜由美」 「亜由美ちゃんかー!なんか新鮮だな」 透はじっと顔を見つめながら、亜由美、亜由美と繰り返し呟く。 「うん!しっくり来た。可愛い名前だね、亜由美」 「ふふっ、ありがとう、透さん」 二人は笑顔で見つめ合うと、今度はチュッと可愛らしいキスをして微笑んだ。 二人の周りを、ハートマークを挟んだ恋する鯉が、ゆらゆらと泳いでいた。
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