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 対して私はと言うと、シンプルにオフィス系の白いブラウスに黒いパンツという出で立ち。2人並ぶサマはきっと月とスッポンに違いない。 「なっちゃん、よく寝てたのよ?あんまり心地良さそうに寝息立ててたから起こすの躊躇(ためら)ったんだけど」 運転手に御礼の言葉を残すと、彼女は私の右肩をトンと触れ、降りましょ、と言った。私はタクシーの運転手がいつの間にか開けた後部座席のドアに気づくと、身体を左に回して両足を出した。グレーに白いラインが入ったシューズが、神奈川県内某所の住宅街である通りのコンクリートの地面に触れて微かに砂がこすれる音が響いた。
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