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 あれから4年が経った。 彼の姉の千奈津さんは、未だに裕人の事を想い続ける私の傍で、「弟の恋人」として接してくれている。たまに「なっちゃん、もう新しい人生、歩んでもいいのよ?裕人も……なっちゃんの幸せ、望んでると思う」と、言ってくれる。その度に私は「私の恋人は……裕人さんだけだから」と答えるが、彼女は寂し気に微笑むことしかしない。  何が正解で、何が幸せなのか。それは私には分からない。もうこの世にいない裕人を想い続けるのが、正解なのか。誰に尋ねても恐らく同じだろう。  彼以外の恋人を作る自分を許せる自信が、私にはない。きっとその想いが正解なんだろう。自然に―――任せる。どこか雲の上にいる「彼」が教えてくれる。―――きっと、そのタイミングを。
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