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 私は扉の閉まった玄関でシューズを脱ぎながら、既に先に廊下へと上がっている千奈津さんの姿と彼女を見上げていた。 「うん、まぁ。明里は?」 「元気だった」 「…そっか」 それ以上、話は盛り上がらなかった。どこか親しげに聞こえる会話のトーン。でも内容はほとんど空っぽだ。社交辞令的で、でもどこか懐かしい関係を伺わせる口調。この関係は、二人は一体どういう仲なんだろう。確か千奈津さんは、『高校時代の知り合いがね、私に学生時代ぶりに連絡よこして来てね?相談したいことがあるらしいんだけど、その子と……その、あんまり仲良くなくてね?でも何か断りにくかったんだ。』と言っていなかっただろうか。
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