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鮮明なトーンで脳裏に流れ出た『話し口調』の思考的な言葉に、私は思わず右手に掴んで脱いでいたシューズを、身体の動きをピタリと止めて床にポタッと言う音を立てて落としていた。その音が聞こえたのか、千奈津さんが振り向いて私に、なっちゃん?と声を投げる。え、と声を漏らすと私はふたりを見上げた。やがて、キョトンとこちらを見ている二人を見上げ。あ……はは…、などと奇妙な作り笑顔を見せて慌てて落としたシューズを拾うと、左右に揃えて二人が立つ廊下へと上がった。  玄関から伸びた廊下は、まっすぐ奥に向かう。右側には旦那さんの書斎があり、左側にキッチンやリビングに進む廊下の枝葉があるようだ。まっすぐ廊下を進んだ突き当りに、洗面所があり、彼女、明里さんは、リビングに案内する際私達に「ここにトイレがあるから、好きに使って下さい」と言ってくれた。
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