1

3/29
前へ
/69ページ
次へ
 すべての遺体の身元確認が出来たのは、そのニュースから更に2日後の空港に泊まり込んだ後のことだった。家族達は一人ずつ身元が確認されていった。  都内某空港のロビーに集まっていた乗客の遺族たちに、マスコミ等メディアの視線は向けられた。疲労が溜まり、待合室の椅子に座り込む姿を、記者やアナウンサー達はこぞって報道していた。  やがて歯科医院等の歯の治療痕記録が行われ、1人ずつ―――1人ずつ一致した被害者の名前が呼ばれた。身元の確認に呼ばれた瞬間、泣き崩れる中高年の女性。子供が誰かと搭乗していたのか、気丈に振る舞い、嗚咽を漏らしながらも、片手で泣き続ける妻を引っ張って向かう30代の男性。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加