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ナルトの章
深夜近くになって、ようやく今日の仕事から解放されると思った。それほど内閣情報調査室は激務なのだ。ロシアや中国担当の調査官じゃ、もう一週間も家に帰ってないやつはざらだ。
「次長!新たな報告が」
「またかよ」
わたしはがっかりした。なんかこの男がメンマに見えてきた。
「お帰りになられるところ悪いのですが…」
「そう思うなら明日にしてくれ」
「ですがことは急を要するのです!」
「こんどは何!」
「ナルトが、消えました」
「あー、そう」
ナルトだって。馬鹿じゃないのか?ナルトがどうやったら日本の危機に結び付けられるんだ?
「次長はことの重大性を認識しておられないのですか!だいたい次長はナルトのことを知っておられるのですか!?」
それツバ飛ばして言うこと?日本の諜報活動の中心のここでそれ必要なこと?
「それって魚肉を使った渦巻き模様のかまぼこだろ?東京じゃ正月の雑煮に欠かせない。うちのかみさん京都の出でな、それ見るの嫌がって、正月にはうちの雑煮にゃ入ってない」
「いまは雑煮の話をしているわけではありません!」
じゃなんの話なんだよ馬鹿野郎。
「石田くん、ナルトは静岡県の焼津での生産が日本で九十パーセントを占めている、いわば純国産品だ。それがなくなったとあれば焼津に何かあったと思わないか?それを調査するのがきみの仕事だろ」
「よ、よくご存じで」
「わたしの実家が静岡だからな。まあいい、その件はきみに任せる。存分に調査してくれ。出張費も出す。だからしばらくここに顔を出すな」
「感謝します次長!」
そう言って石田は部屋を飛び出して行った。まあ、ラーメン好きも高じればああなるという見本みたいなもんだな。
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