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ラクスがエーテルに目を向けた直後だった。
エーテルがラクスを抱きしめていた。
ラクスは岩のように固まっていた。
「な、なにを…」
エーテルはラクスより背が低いので、ラクスが見下ろすと、こちらを見上げるエーテルの目線とぶつかっていた。
困惑するラクスの背中を、エーテルは撫でていた。
「嫌ですか?」
「嫌、ではないが…変な感じだ。」
誰かにこうされるのは今までなかった事だったから、くすぐったいような気持ちになった。
「ふふふ、天使のハグは高くつきますよ?」
エーテルが悪戯っ子のように囁いた。
「…え?」
「なんてね、冗談です。」
エーテルはウインクを飛ばしながら、蕩けるような微笑みを漏らしていた。
「…だが、今はこういうのも、悪くない。」
「ふふ、私の魅力があなたにも伝わってきたようですね?」
「…え?」
「ちょっと!心底わからない、とでも言いたげな顔をしないで貰えます!?」
ギャーギャーと騒ぐエーテル。
ラクスはふっと笑みを溢していた。
「あんたは呑気で羨ましいな。」
「おや、私を馬鹿にしてますか?」
「いいや?」
「なら、良いですけど。」
その割にはエーテルはムス、と頬を膨らませていた。
「悪い。許してくれ。誰かとこうやって話すのは、久しぶりなんだ。」
「も~、それなら仕方ないですね。」
単純なのか何なのか。
ラクスを元気付ける為に道化を演じているのだろうか。いや、これは天然だ。
そんなエーテルに、ラクスは救われていたのだった。
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