10人が本棚に入れています
本棚に追加
束の間の記憶
「ラクスの作ったスープは絶品ですね…!」
子供のように嬉しそうにはしゃぐエーテルを見ていると、ラクスは微笑ましい気持ちになった。
「料理は昔から得意だ。」
「私の専属になってほしいくらいですよ。」
「すっかり、ヒトの味に落ちたな。」
ラクスがからかうように言えば、エーテルは顔を赤くした。
「…ッ、天使も食事の文化くらいはあっても良いかもしれませんね。」
「前と言ってることが違うな?」
「か、からかわないでください…っ」
頬を赤らめるエーテルは可愛らしく見えた。
「…とにかく、これは素人の私でもかなり美味しいのだとわかります。
人に振る舞ってはいかがです?たとえば、店を開くとか。」
「適当な事を言ってないか?」
「まさか。」
顔を見ると真剣だった。
食事の文化がない天使に何がわかるのだと思った。
しかし、美味しいという味覚があるのを見るに、人と差がない味覚を創造神から与えられているのだろうか。
どちらにしても、過去に同じ事を言った人物がいた。
ふと、ラクスの脳内をよぎるのは、過去の事だった。
『ラクスのスープは相変わらず美味しいよね~!』
『レーノルズはラクスがなに作っても美味しい美味しいって、喜んで食べてるじゃない。
どれどれ、あたしも味見を…って、本当に美味しいわね…!』
メリルがつり目を大きく見開いて、笑みを溢した。メリルは神官だが、気が強いお転婆少女だった。
『あー、皆良いなー!俺も俺も!うっま!!メリルの料理と大違いだな!』
そう言ったのはナイフ使いの少年、シュティーだった。シュティーとメリルは同じスラム育ちの幼馴染みだ。
『ちょっと、シュティー!?どういう事よ!?』
最初のコメントを投稿しよう!