束の間の記憶

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束の間の記憶

 「ラクスの作ったスープは絶品ですね…!」  子供のように嬉しそうにはしゃぐエーテルを見ていると、ラクスは微笑(ほほえ)ましい気持ちになった。  「料理は昔から得意だ。」  「私の専属になってほしいくらいですよ。」  「すっかり、ヒトの味に落ちたな。」 ラクスがからかうように言えば、エーテルは顔を赤くした。  「…ッ、天使も食事の文化くらいはあっても良いかもしれませんね。」  「前と言ってることが違うな?」    「か、からかわないでください…っ」 頬を赤らめるエーテルは可愛(かわい)らしく見えた。  「…とにかく、これは素人の私でもかなり美味しいのだとわかります。 人に振る舞ってはいかがです?たとえば、店を開くとか。」  「適当な事を言ってないか?」  「まさか。」 顔を見ると真剣だった。  食事の文化がない天使に何がわかるのだと思った。 しかし、美味しいという味覚があるのを見るに、人と差がない味覚を創造神から与えられているのだろうか。 どちらにしても、過去に同じ事を言った人物がいた。  ふと、ラクスの脳内をよぎるのは、過去の事だった。    『ラクスのスープは相変わらず美味しいよね~!』  『レーノルズはラクスがなに作っても美味しい美味しいって、喜んで食べてるじゃない。 どれどれ、あたしも味見を…って、本当に美味しいわね…!』  メリルがつり目を大きく見開いて、笑みを溢した。メリルは神官だが、気が強いお転婆少女だった。  『あー、皆良いなー!俺も俺も!うっま!!メリルの料理と大違いだな!』  そう言ったのはナイフ使いの少年、シュティーだった。シュティーとメリルは同じスラム育ちの幼馴染みだ。  『ちょっと、シュティー!?どういう事よ!?』
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