10人が本棚に入れています
本棚に追加
エデンの塔
そびえ立つ塔は見上げるほど大きい。
多くの命を奪っている場所とは思えないほど、真っ白な塔だった。
「天空に通じていると言うのは、あながち嘘でもなさそうだ。」
「あながちではなく、事実ですよ。
この塔の最上階に、天使だけが開けられる仕掛けがあります。そこから天空に行く事が出来るんです。」
「へえ、これは人間が作った建物じゃないのか?」
「エデンの塔を作ったのは創造神様です。
だから塔の内部に時の概念はなく、過去でもあり未来でもあり、時が止まっているとも言われています。」
「ふーん。」
「ふーんって、なんですかっ、興味がなさそうですねっ!聞いたのはあなたなのにっ!
ラクスはいつも涼しげなんですから。」
「そうでもない。」
「…え?」
苦笑しつつ、ラクスはエーテルに手を見せた。
ラクスの手は、震えていた。
恐怖、もしくは高揚。自身にあるのがどちらか、わからなかった。あるいは両方かもしれない。
「大丈夫、なんですか…?」
心配そうに問うてくるエーテルの頭を、ラクスは苦し紛れにポンポンと撫でる。
「ああ。魔物が現れた時までには、どうにかしておく。…あんたも、そろそろ帰る準備をしておけ。」
ラクスは塔を見上げると、入口に向かって歩き出していた。
「もう、仕方がないですねぇ。
…世話が焼けるヒトなんですから。」
やれやれと、息を吐きつつ、エーテルはラクスのあとを追った。
最初のコメントを投稿しよう!