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大きな声が聞こえた。我に返ると、エーテルがラクスの顔を覗き込んでいた。
「…エーテル。」
ラクスは、キノコの魔物の胞子を食らったのだと思い出す。それで幻覚を見ていたのだと。
思い出したくなかった、あの瞬間の過去の記憶を見た。
「…ラクス、顔色が悪いですが、大丈夫ですか?今日は一度、ここを出ますか?」
ラクスは即座に首を横に振っていた。
「俺は平気だ。」
「本当に?」
エーテルの顔は、どこまでも真剣だった。
ラクスの事だけを考えているように見えた。
玉のような汗を掻き、動悸がした。
だが、ここを越えなければ、ラクスは前に進めないと思った。
「ああ。」
「…信じて、良いんですね?」
「この言葉に、嘘偽りはない。
俺を信じてほしい。本当に無理だと思ったら、あんたに言う。」
ラクスがエーテルの煌めく瞳を見つめ返す。
エーテルは呆れたように、大きな息を吐いた。
「わかりました。あなたは私を手伝ってくれているわけですから、文句は言えません。
ですが、くれぐれも無理はしないで。
何かあったら、すぐに私に言ってください。
私がついてますから。」
「ああ…必ず約束する。」
一人だったらきっと無理だった。
だが、今はエーテルがいる。だから平気なのだ。
まさか、エーテルから元気をもらう日が来るとは思わなかった。
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