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因縁
エデンの塔は不思議な場所だった。
エーテルが言っていたように、時の概念がないと言う言葉に、嘘はなさそうだ。
辺りには、いつからわからない魔物や、魔物に限らず、倒れた人の姿が多く見られた。
エデンの塔は構造上、登るのは比較的容易いが、探索するとなったら途端に迷子になるほどの大迷宮だ。
それこそ神が作ったと言われても、不思議ではない。
ある、問題の階がある。
上層のその階は独特で、上がる為の階段が入り組んだ場所にあり、かなり迷いやすい。
そしてその階には、階全体を動き回る、番人のような強力な魔物がいる。
そいつに、パーティーは崩壊させられた。
その問題の階に到着した時、ラクスは他と比較にならない緊張感を感じていた。
「凄い、臭いですね…。」
「ああ…ここが、エデンの塔の難関の一つと言っても良い。」
エデンの塔を登る上では避けられないという意味では、一番の難関とも言える。
漂う独特の臭い、そしておびただしい亡骸。
そいつは人を好み、見つけたら手当たり次第に殺す。
この階の支配者と言ってもいい。
「ラクス、焦る気持ちはわかりますが…」
ラクスは自然と足早になっていた。
それも当然。こんな階、早く抜けたかったから。
「わかってる。だが、あいつが来る前に、早く上がりたい。
奴は他の階には移動しない。ここが奴の縄張りだからだ。だから…」
歩いている内に見覚えのある風景が、目に入ってしまう。
気づいた頃には遅い。目をそらそうとした時には、全て見えてしまった。
そこにはラクスの仲間の、無数の亡骸が、当時のまま生々しく残されていた。
「…ッ!!みんな…レーノルズ…シュティー…メリル…!!」
時が止まった塔の残酷さを、ラクスは思い知らされていた。
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