過去の面影

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過去の面影

 焚き火を前に、焼いただけの魚を、エーテルは美味しそうに食べていた。  「うまいか?」  「美味しいです…!」  さっきまでエーテルは『天空の観測者である私が、地上の生き物を口にするわけには。』だの、『生の恵みに感謝して云々』と垂れていたが、一度口にしたら見事落ちた。  「天使って食べなくても平気だと言っていたが、地上の生き物を食べて良いのか? はしたない行いとか色々言ってなかったか?」  「そ、それは…ッ!!」 むせて可哀想だったので、ラクスはエーテルの背中を擦っていた。  「冗談だ。食べたければ食べろ。片翼になって、体力が落ちてると言っていたろ。」  「ええ…翼を片方失っていつも通りじゃないんです。 天空に戻ったら、きっと創造神様が治して下さるでしょう。」 少しだけ申し訳なさそうに、エーテルは淡い笑みを(こぼ)した。  「俺から見ていると天使もヒトも、それほど変わらないように見えるが。」  「違います。創造神様は私達天使をヒトと似ている形にお作りになっただけで、天使はヒトとは別種の」 言い終わる前に、ラクスはエーテルの額を軽く小突く。  「わかったわかった。」  「あなたは何もわかっておりませんっ」  エーテルは涙目になっていたので、ラクスは赤くなった額を撫でていた。  「悪い。軽くやったつもりだったが、痛かったか…?」  「そ、そういう問題ではありません…っ」  不満げに、気に入らなそうに見つめてくるエーテルを見ていると、一瞬、昔の親友と重なって見えた。     「…私を見つめて、何です? 私に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになりましたか?土下座する気持ちにでも」  「違う。…何でもない。」 ラクスは思わず、立ち上がっていた。 久しぶりに他者と言葉を交わしているからか。  そうでなければ、エーテルと似ても似つかない親友が重なって見えるわけがない。
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