過去の面影

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 「レーノルズ…」 (つぶや)いた時だった。 獣の唸り声が聞こえ、目を向けた時、周囲には数匹の魔獣が集まっていた。  「魔獣…のようですね。」  「下がってろ。」  ラクスはエーテルを庇うように立ち、向かってくる魔獣を、剣で切り伏せていた。  「はぁ…ッ!」 立て続けに向かってくる魔獣を全て倒し、ラクスが息をついた瞬間だった。  別の方向からも魔獣が迫っていた事に気づく。しかしラクスは咄嗟(とっさ)に反応出来ない。  せめて、エーテルだけでも守ろうと、庇おうとした瞬間だった。  「聖なる光!(ルーチェ)」  エーテルが放った魔法の光が、魔獣を倒していた。 ラクスはエーテルを見つめて、目を(またた)かせる。  「あんた、戦えたのか。」  「当然です。私は天使ですから。」 エーテルは胸を押さえ、自信満々に言って見せた。  「そうか。」 親友のレーノルズは魔法使いだった。 そういうところすら、似ている。  「ですが、ラクス、私を咄嗟(とっさ)に守ろうとしていましたね。 …あなたは、優しいヒトですね。」 淡い微笑(ほほえ)みを(こぼ)して言うエーテルから、ラクスは目をそらしていた。  「…俺はそんなんじゃない。」  「優しいですよ。私を助け、私を帰す為に手伝おうとし、それから私を守ろうとしましたから。」  「それはあんたの為じゃない。自分の為だ。勘違いするな。」 (まばた)きするエーテルに、ラクスは言っていた。 誰かの為なんかではない。 本当にこれは、自分の為だ。 自分が過去と決着をつける為の行動だ。  ラクスは交代で夜の見張りをしていた。 近くではエーテルが、呑気(のんき)に寝息を立てて寝ている。  焚き火を眺めていると、眠気と共に昔の記憶がよぎった。 これは、村を出た初めての夜の事だったか。  『ラクス、いよいよ僕達も冒険者だね。』  『そうだな。』  『あ、ラクスったら緊張してる~?顔に出てるよ。』 ツンツンと頬を小突いてくる幼馴染みのレーノルズ。 昔からの事で、ラクスはされるがままになる。  『うざい…』  『顔は喜んでるよ?』  『はいはい。そういうお前も緊張してるらしいな、レーノルズ。』
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