過去の面影

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 レーノルズはバレたか、と言わんばかりに笑みを(こぼ)した。  『そりゃそうだよ。今の僕達は村を出るだけでも第一歩を踏み出したんだ。 立派な冒険者になって、僕達でエデンの塔を攻略しよう。』  『そうだな。だがもう少し強くなってからだな。』  『そりゃそうだよ~今の僕達じゃ即死だよ。仲間を集めて、それから挑もう。 未知なるお宝を見つけたら、人生そのものが変わるかもしれないもんね。』  『ああ。俺達で宝を見つけて…でかくなってやる。誰にも、何も言わせないくらい。』  ラクスは月が輝く夜空に手を伸ばしていた。 その手には、どこまでも希望が詰まっていた。  『あは、ラクスは野心家だなぁ。 でも夢は大きく持たないとね。 僕も手伝うよ。なんせ、親友だから。』  『うざ…』  『え~酷いなぁ。』  そうは言いつつ、レーノルズは楽しそうに笑っていた。  二人揃えば何でも出来ると、無敵な気分でいた。ラクスも、そしてレーノルズも同じ気持ちだった。 今思えば、若さ故の無謀(むぼう)さだった。  我に返ったラクスは、エーテルの寝顔に目を向けていた。 天使の寝顔は、まるで出来が良い彫刻のように整っていて、壊れてしまいそうなまでに美しかった。  「むにゃ…もう、食べられません…」 聞こえてきた寝言に、ラクスは苦笑していた。  エーテルのお調子者で少しラクスを舐めている風に見える態度は、どこかレーノルズを思い出させた。  遠くにそびえ立つ白い塔が見えてくる。 場所もパサード村近くだから当然だ。  「あれがエデンの塔、ですか。」 ラクスとエーテルは何個か村を経由して、ここまで来ていた。  「ああ…多くの冒険者が犠牲になった。」 ラクスは遠くを見据(みす)えていた。 エデンの塔と言うよりは、デビルの塔と言った方が良いだろう。 他者を惹き付け、悪魔の誘いに乗った人間を飲み込む迷宮。  「ちょっと前は魔物も少なかったそうですが、そんな事になっているとは。」  「そのちょっと前ってどれくらい前の事だ…?」    「二百年前くらいでしょうか?」 わざとかそうでないのか、ニコニコと答えるエーテルに、ラクスは呆れた目を向けていた。  「…行こう。そろそろパサード村に着く。」  「あれ?村に寄らないのでは?」  「そのつもりだったが、気が変わった。」  ラクスが横目で見ると、エーテルは不思議そうに首を(かし)げていた。
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