故郷の村

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故郷の村

 十年前、エデンの塔から一人生き残ったラクスは、逃げるようにパサード村に帰った。  『ラクス、帰ってきたのかい。レーノルズが迷惑をかけてないかい?』 レーノルズの母がそう言ってきた時、ラクスは何も答えられなかった。  『ラクス…?レーノルズはどうしたんだい…?それに、シュティーとメリルは?』  シュティー、メリルはエデンの塔を目指していく内に出来た仲間だった。 ラクスとレーノルズは、彼らを連れて村に一度顔を見せた事があった。  青ざめるラクスに、レーノルズの母は顔が険しくなっていく。  『ラクス!答えておくれ!!』  玉のような汗が浮かぶ。 ラクスは震えながら声を振り絞っていた。  『皆…死んだ…シュティーも、メリルも、レーノルズも…俺のせいで、死んだ…。』 レーノルズの母はラクスの事を叩いていた。  地面に叩きつけられたラクスが見上げた時、彼女はラクスの事を化け物でも見るような目で見下ろしていた。  『よく、ノコノコと帰って来られたものだね!?あの子はあんたが冒険者になるからと自分も冒険者になると言って聞かなかったんだ!あんたさえ居なければ…! シュティーもメリルもだよ…!あの子達はまだ幼かったのに…! あんたはいつも、周りにいる人間を不幸にする…!』 ラクスは何も言えなかった。  ラクスはそれから十年、仲間への罪の意識を抱え、山奥にひたすら引きこもった。 その時の事はきっかけの一つに過ぎない。  仲間を死なせた罪の意識から逃れたくて、誰かと関わるとまた死んでしまいそうな気がして、ラクスをそうさせたのだ。  「…どうして、帰ってきたんだろうな…。」  「え?」  「いや、独り言だ。」  故郷のパサード村は、十年前から何も変わってなかった。  山に囲まれ、さらに向こうにエデンの塔が見える。 並ぶ家を見ていると、昔の事ばかりが思い起こされる。  「ラクス、久しぶりだなぁ。」     「ああ。」  「そこのべっぴんさんは…?白い翼…本物か?」  「ただの同行者だ。気にしなくて良い。」 村の者を適当に相手しつつ、ラクスは歩く。 それをエーテルは不満そうに見ていた。  「ただの同行者、ですか。」  「不満か?」  「…いえ?」 不満そうだったが、無視する。  「…ラクス、あなたはどんな風に育ったんですか?生まれ故郷なのに、全然嬉しそうではなさそうですね。」  エーテルが仕返しとばかりに、ラクスの頬をつついてくるのが鬱陶(うっとう)しかった。
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