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「聞いてもつまらないと思うが。」
「つまらなくても構いません。
私はどんな種族より、ヒトを見る事が一番好きなんです。
ヒトは私達には想像もつかない事をしてみせますから。」
穏やかに言うエーテルは、天使に違わぬ微笑みを浮かべていた。
「全く…俺達はあんたらの見世物じゃないんだぞ。」
「誤解を招いたのなら謝ります。
見世物とかではなく、私は純粋にヒトが好きなんです。」
馬鹿にしているわけでもなく、エーテルの顔はどこまでも真剣だった。
『答える必要はない。』そう答えようとしたが、エーテルの好奇心旺盛な態度に、ラクスはきっと負けた。
ラクスは目的の場所に向かいながら、口を開いていた。
「俺はこの村で生まれ育った。
父は村の者だが、母は王国の貴族の娘だった。」
ラクスはぼんやりと、エーテルに語っていた。
母は大国の貴族の娘だったが、窮屈な環境に嫌気が差していた。
そんな時、遠方の村から王国に出稼ぎに来ていた父に一目惚れする。
母は村に帰る父についていく形で家を出奔した。
しかし父は、ラクスを生んですぐに死んでしまった。
母は村での居場所を失い、よそ者だと陰口を叩かれた。
ラクスは当時、母から八つ当たりを受ける機会が多かった。
それでもただ一人の家族だからとラクスは母の事を大切に思っていた。
結果、母は村を偶然訪れた冒険者に一目惚れして、ラクスを捨てて、駆け落ちした。
今考えると、母の身勝手さとフットワークの軽さにはもはや笑えてくるが、当時は悲しかった。
村の者からは腫れ物のように扱われ、完全に人間不信になっていた。
そんな時、ラクスを救ったのは、幼馴染みで親友のレーノルズ一家だった。
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