生命体『H』

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 その日、大きな生命体は激しく身体を揺さぶった。  過去に例を見ないほどの振動と衝撃。  怒りと怨念に満ちた振動だった。  大きな生命体の中に住まうあらゆる生命体は、互いの組織を破壊され、みな散り散りになった。多くの小さな生命体が、その振動で命を落とした。  振動とともに、大きな生命体の内部から真っ赤な灼熱の液体が噴出。小さな生命体を次々と焼き尽くした。  振動が止まり、高熱の液体が納まる頃、今度は大量の水が細胞たちを襲った。半死半生の細胞たちは空気の供給ができず、ここでもたくさんの小さな細胞たちが死んだ。  その制裁は休むことなく続けられた。振動と洪水、そして灼熱の液。  細胞たちは壊滅状態となった。  もちろん、今まで大きな生命体の中で王者に君臨していた生命体Hも。  大きな生命体の怒りは、頂点に達していたのだ。
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