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その生命体が誕生した当初、体内に別の生命は存在しなかった。いや、荒れ狂う体内には、存在しきれなかったという方が正しい。
高熱のドロドロした液体が蔓延り、強酸性の滴が降り注ぐその世界には、何モノも存在し得なかったのだ。
やがてそれが落ち着くと、小さな命が誕生した。しかし、まだ生命体と呼べる代物ではなかった。細菌に近い命だった。
小さな細菌は進化を繰り返し、劣悪な環境に順応していった。環境への適応を経て、大きな生命体の中には、別の小さな生命体が誕生した。
とてつもなく長い時を経て、大きな生命体の中には何億、何兆もの小さな生命体が住まうようになった。
大きな生命体は、それら小さな生命体を『非自己』として拒むことなく、『自己』の一部として受け入れた。
共存する道を選んだのだ。
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