生命体『H』

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 Hが繁殖するにつれ、その住処である大きな生命体は傷んだが、耐えられない痛みではなかったため、しばらく様子を見ていた。  その間にも生命体Hは自分の縄張りを広げていった。個の力は弱いが、集団になると、それはもはや脅威だった。  大きな生命体の中は汚れていった。規則正しかった生命体の秩序は、Hの出現によって(ことごと)く乱れていった。  中にはすでに再起不能となった組織も出来上がったが、生命体Hはそれを無視して、次々と自分たちの住みやすい組織を拡大していった。  そこが廃墟になると、そこを捨てて次の居住地を浸食していく。それが生命体Hのやり方だった。  大きな生命体のほとんどが生命体Hに支配された。生命体Hの力は衰えるところを知らず、大きな生命体自体の存続が危ぶまれるまでになっていた。  それでも大きな生命体は我慢していた。  いつかは共存できる。そう信じて。
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