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嘘つきは舌が伸びる
「な、知ってるか。この辺の昔話に、嘘つき爺さんがいて、あまりにも嘘をついて村人を困らせるから、村の神様の罰が当たって、口に収まらないくらい急に舌が伸びて、あまりにも伸びてしまって、ついうっかり、自分で舌を噛んじまってそのまま死んじまうって話、あと、嘘つきは閻魔様に舌を引き抜かれるってのもあるよな」
「ふが、おひ、おひ、なんのつもりだ」
精神病院で使われるような拘束椅子に固定され、口をガッと強引に広げる医療器具のようなもので口を固定されているので、うまく喋れないが、それでも、黙っていられない。
「おい、こんなことしてただですむとおもってひるのか、おひ、なひやってるのか、ひゃかってるのか」
「分かってるのか? ああ、自分が何をやってるのかわかってるさ。嘘つきには罰が与えられるのが、当然だろ?」
「ば、ばつ?」
「そうだよ、嘘つきの罰。お前、この間の土曜日、彼女と会っていないと嘘ついただろ。親友だと思ってたのに。嘘つきには罰を与えないといけないだろ」
ペンチのような器具を手に持ち、俺の舌をそれで掴むと、思い切り引っ張り始めた。
「ひで、ひでっ、ひゃ、ひゃめろ、クソ」
確かに、俺は彼女に内緒で会った。それは、元彼のこいつが復縁しろとしつこいから、親友であるこの俺に未練タラタラの元彼を何とかして欲しいと相談されたからだ。だから、内緒で、こっそり彼女と会ったわけだが、それがどうもこいつには気に入らなかったようだ。舌を引っ張られながら、彼女がこいつと別れたのは正解だったと思いながら、自分の舌が千切れる痛みを感じながら、俺もこいつと縁を切っておけばよかったと後悔しながら、口の中に生暖かい血を味わっていた。
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