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田んぼ
あれ…?
加賀美さんの匂いだ…
そっか…ハンカチ…貰ったんだった…
なんでこんなに
安心するのかな
パチッ
あれ?
もう結構明るい
珍しいな
叶さん、いっつも早起きなのに
?
叶さん、珍しいパジャマ着てる
それで熟睡?
見上げてみると……
「…………え?」
叶さんじゃない
加賀美さんだ!
え?
何で?
昨日…どうやって寝たっけ?
叶さんと一緒に、如月さんに挨拶して
叶さんと寝て……
寝てからの記憶……ない
何が起きて加賀美さんに変わったの?
……加賀美さんの寝顔…見ちゃった
「ふふっ」
何が起きたか分かんないけどラッキーだ
「……ん?」
わっ!
抱き枕みたいにされた
加賀美さん…熟睡してるのかな
ああ…
だからこんなに加賀美さんの匂いしたんだ
加賀美さんの匂いの中に居ると…
また…
眠くなっちゃう
なんか俺…
寝てばっかり……
「父さん!見て見て!」
「何だ?手の中何か…うわっ!」
俺の手の中から、アマガエルが勢い良く飛び出した
「あははっ!さっき、そこの葉っぱの上に居たの」
「グワッ グワッ グワッ」
地面に降り立った蛙が鳴く
「アマガエルかな?」
「そうだよ!アマガエル!」
ピョ~ンと蛙が、元の葉っぱの方に戻ってく
「バイバイ!蛙!」
「グワッ グワッ グワッ」
「ははっ。返事した」
「アマガエルが鳴いたなら、雨が降るな」
父さんが空を見ながら言う
「え~、雨かぁ」
「結は、雨が嫌い?」
「だって濡れるでしょ?外で遊べないでしょ?次の日泥だらけでしょ?好きな人なんている?」
父さんが、俺を抱き上げた
「見てごらん、結。綺麗な田んぼだね」
「うん。ヒデじぃの田んぼ、今年も手伝う?」
「うん。手伝うよ。でも、雨が降らなかったら、ヒデじぃの田んぼは、こんな綺麗じゃいられないんだ」
?
「……なんで?」
「すっごく沢山の水を使うから、ヒデじぃのお金がなくなっちゃう」
「えっ?!」
「でも、雨が降ってくれたらお金かかんない」
「い…いっぱい降らなきゃ!」
「うん。雨が降ると、稲が育つだろ?蛙も田んぼで育つだろ?そして、稲を食べに来た害虫を、蛙が食べてくれるんだ」
「おお…蛙、偉い!」
「他にも雨が降ると助かる人が沢山居るんだよ?」
「じゃあ、雨降り我慢する」
「我慢かぁ。雨が降ってると、ヒデじぃ喜んでるかな?また蛙増えたかな?他にも沢山の人、助かった~って思ってるかな?って考えると、嬉しくならない?」
「なる!ヒデじぃと、あと…ヨネばぁも喜ぶ!」
「うん。きっと一緒に喜んでるよ。結はいい子だなぁ。でもね、凄く大切な雨だけど、結は外で遊ぶの我慢するだろ?だから時々、綺麗なご褒美見せてくれるんだよ?」
「綺麗なご褒美?」
雨は…誰かが何処かで喜んでるから
嫌いじゃなくなった
雨の後に見せてくれる
綺麗な虹も大好きだ
雨は…
「きゃ~!!人…人が…」
嫌いじゃ…
「救急車!早く!誰か救急車!」
雨……嫌い
やだ…
雨…降らないで
暗くて...
嫌い!
父さん…そこに居るから…
やだ!
来ないで!!
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